2003年3月1日(土) 午前
Surströmmings
「DDのノルウェー日記」は、DDがノルウェーで体験したことを、客観的視点に立って記述してきたものである。もちろん、「日記」であるからには、DDがどう思ったかという主観も少し織りまぜている。
しかし、今回はこのスタイルを若干変えて、DDがどのように感じたか(主観)を中心に記述する。
それは一通のメールから始まった。差出人はDDの後輩のNマツ君(仮名)である。メールの詳細は実際のものと少し異なるが、内容はこんな感じである。
From: Nマツ
To: DD
Subject: ハルデン訪問DDさま
ご無沙汰しています。Nマツです。
私は今、スウェーデンのマルメという街に住んでいます。ここからノルウェーのハルデンは近いので、一度遊びに行ってもいいですか?
Nマツ君は奇遇にも近くに住んでいるようだ。是非、遊びに来てほしいものだ。
From: DD
To: Nマツ
Subject: Re: ハルデン訪問Nマツ殿
ご無沙汰です。
マルメに住んでいるんですか! 近くですね。是非、遊びにきてください。電車が便利だと思います。到着時間がわかればハルデン駅まで迎えに行きます。
というわけで、Nマツ君は我が家へやってくることになったわけである。
そして、来る直前になってNマツ君からまたメールが届いた。
From: Nマツ
To: DD
Subject: Re: ハルデン訪問DDさま
今度の金曜日にそちらへ行きます。20時4分にハルデン駅へ到着する予定です。できれば駅まで迎えに来てください。
それと、何かお土産のリクエストはありますか? あれば持っていきます。
なんて気が利くNマツ君だ! ちゃんとお土産を持ってくるつもりらしい。おまけに、こちらからリクエストしてもいいようだ。
でも、スウェーデンのお土産って・・・? いつも週末にはスウェーデンのスーパーへ買い物に行っているし、特に欲しいものはないのだが・・・。う〜ん、スウェーデン○○○のDVDとか・・・?(笑)
From: DD
To: Nマツ
Subject: Re: ハルデン訪問Nマツ殿
了解しました。電車の到着時間に駅まで迎えに行きます。
それと、お土産はシュールストレーミングの缶を持ってきてください(笑)。
シュールストレーミング(Surströmmings)をご存じだろうか? そう、テレビで良く見るアレである。何でも、塩漬けにした魚を腐らした缶詰で、缶を開けるととてつもなく臭いヤツである。世界一臭い食べ物として有名だ。臭いは危険なぐらいすさまじいらしい。テレビでは、よく罰ゲームとして用いられている。
シュールストレーミングは秋の食べ物なので、この季節ではまず手に入らない。もちろん、「お土産はシュールストレーミングを持ってきてください(笑)」というのは冗談である。Nマツ君もそのへんはわかっていて、何か適当なお土産を持ってきてくれるだろう。
そんなわけで、金曜の夜に駅まで迎えに行くと、予定通りNマツ君に会うことができた。
Nマツ「DDさん、久しぶりですね。元気にしてましたか?」
DD「おおっ! 久しぶり! 元気〜? ところでお土産は?」
Nマツ「もちろん、シュールストレーミングですよ。2缶持ってきました」
はぁ? なんですとぉ? マジで持ってきたぁ? お前、メール読んだか? 文章の最後に「(笑)」って書いてあっただろ! 冗談に決まってるよ!
DD「マジで?(引きつり笑い) そんなもの、どこに売ってたんだよ?」
Nマツ「近所のスーパーに売ってましたよ。でも、僕、シュールストレーミングって何か知らなかったんです。店の人に聞いたら、ちょっと臭いみたいですね」
ちょっとじゃねーよ!
まぁ、いいかぁ(ちっとも良くない)。でも、これは、航空便にすると気圧の関係で缶が爆発するかもしれないので日本に持って帰れないし、どうしよう・・・。
次の日(すなわち、今日)の朝、Nマツ君はDDに向かって言い放った。
Nマツ「持ってきたシュールストレーミング、開けてみましょうか?」
嫁「そうよね。私も興味あるわ。どれほど強烈な臭いなのかしら?」
はぁ? なんですとぉ?(パート2) アナタ達、頭はダイジョウブデスカ? こんなアパートで缶を開けられるワケないでしょ!
心の中で思いっきり突っ込んだが、そんなことはおくびにも出さずに、
DD「でも、アパートで開けたら近所の人が迷惑だよ。」
と冷静に反論する。しかし、敵もさるものである。
Nマツ「折角、持ってきたんだから、開けましょうよ。こんな体験、二度とできませんよ。」
すでに、今年の1月に「Rakefisklag」という腐ったマスで痛い目に遭ってるんですけど・・・・。
嫁「そうよ。私も見てみたい。」
マジで? アンタも痛い目に遭ってるだろ? まぁ、裏庭でNマツ君が缶を開けて、そのニオイに悶えているところを見るのも面白いか。
DD「それじゃ、開けてみようか。 Nマツ、頼むよ。」
Nマツ「何言ってるんですか! 開けるのはDDさんでしょ。言い出しっぺだし。」
嫁「そうよ。あなたが持って来てって頼んだんでしょ。」
はぁ? なんですとぉ?(パート3) 缶を開けるのは、ワタシデスカ・・・? ワタシデスカ・・・? ワタシデスカ・・・? ワタシデスカ・・・?(以下、省略)
そんなワケで、DDが缶を開けることになった(マジで?)。もう、ヤケクソである。
これが、問題のシュールストレーミングの缶だ。どうやら、塩漬けにしたニシンを腐らせたもののようだ。発酵が進んでいるためか、缶は上下に膨らんでいる。
缶を空ける場所は、DDのアパートの裏庭だ。両手にビニール袋をはめて完全武装である。
そして、缶ごとビニール袋に入れて缶切りで開ける。プシューッという音がして、中のガスが出てくる。 うっ! 臭すぎてニオイがわからない。 おまけに、なんか目が痛いんですけど・・・。
子供もこの通り。でも、Nマツ! お前、なんでそんな離れたところにいるんだよ!
ここまで来たからには開けきるしかない。ニオイを我慢しながら缶を切り進む。はっきり言って、永遠とも思える時間であった。
この子も、この通り(笑)。でも、DDは笑えない・・・。
ああっ、あと少しのところで、どうしても切れないところがある。だんだんと気が遠くなっていくのがわかるような気がする。呼吸してないからだろうか?
気が遠くなりながらも、なんとか缶を開けることに成功した。ふぅ・・・。
見た目も気持ち悪いんですけど・・・。マジでこれ食べるの?
ここまで来たら、食べてみたいのが人情である。調味料はマヨネーズ。こちらのマヨネーズは酸っぱくないので、魚料理にはもってこいだ。
試食タイ〜ム。この頃になると、鼻が完全に麻痺している。臭いことはわかるのだが、どの程度臭いのかは、もうわからない。ちなみに、味は思ったより塩辛く、食べるとニオイが倍増される。マヨネーズの味なんて、まったくわからない。
オェッ、これって人間の食べるものじゃねぇ! ていうか、「食べ物」じゃねぇ!
これを離れたところから見ていたNマツ君と嫁さんは大笑い。大受けである。オマエラ・・・。
この際だから言わせてもらうと、これを喜んで食べるスウェーデン人は
バカ物好きである。DD「Nマツ! 食えよ」
DDの眼差しがよほど怖かったのであろうか。Nマツ君も渋々食べてみることにしたらしい。
「なんで、そんなちょっとしかつままないんだよ! もっと大きなヤツを食えよ!」と言いたいところだが、大人のDDは優しく見守ってあげることにした。
口に入れた瞬間、Nマツの動作はフリーズした。5秒、10秒、・・・、時間が流れていく。
次の瞬間、庭の端へ猛ダッシュ! コイツ、反応が面白れー(大笑)。
その後、お茶をがぶ飲み。気持ちはわかるよ、Nマツ。さすがに、これ以上は食べられなかった。 というか、食べたら死ぬ!
残った魚は新聞紙で包んでから、
何重にもビニール袋に入れて、
最後は、思いっきり袋を縛って捨てた。ゴミ回収の方、ごめんなさい。万が一にも袋が破れたら・・・・。シュールストレーミングのニオイは、基本的に「Rakefisklag」と同じである。しかし、ニオイの強烈さは、その比ではない。
このニオイは興味がある方も多いと思うが、マジで洒落にならないので缶を開けるのはやめた方がいいだろう。食べるのはもっと危険である。後でゲップをすると、強烈なニオイで苦しめられることになる。食べた後にコーラなんか飲んだりしたら大変だ(実証済み)。
ところで、Mさん、もう一缶残ってるんですけど持っていきましょうか?(マジで)
ご質問はddkunnejpgmail.comまで。