2001年4月17日(火)

キーレスの改造 − To-Fit新基板編

インターネット上で知り合ったとある人(Aさん)の依頼を受け、キーレス受信機を改造をするためのチップを作成して送ることになった。私の「キーレス取り付け−その1」と「キーレス取り付け−その2」を見て、キーレスを取り付ける気になったらしい。奇特な人もいるものだ・・・・。

Aさんは、私と同じようにTo-Fitにキー一体式キーレスエントリーを注文していたが、届いたものは私のものとは違うものであった。Oh, My God!である。外見はまったく同じなのだが、受信機の基板がバージョンアップされているようだ。さらに、ロケーター機能というものも付いている(ロケーター機能とは、広い駐車場などで自車位置を探す際に、ロケーターボタンを押すことで、ハザードランプが点滅するものである)。届いたキーレスの受信機基板は写真1のとおりである。


写真1 届いたキーレスの受信機基板

私のキーレスの受信機基板は、「JAPAN-285」であった。これは、「JAPAN-285(B)」である。バージョンアップされている・・・・・・。これでは、私のHPを参考に改造することはできない。そこで、Aさんの依頼を受け、私が改造することになった。なお、Aさんには「改造中に壊れても文句を言わない」という約束を取り付けた。なんて、ずるい私・・・・。

 

To-Fit新基板の改造マニュアル

大層なサブタイトルを付けてしまった(苦笑)。まずは、基板の解析から始める。解析に使う道具は写真2、3のようなものである。あとは気合いだけ。

      
写真2 定電圧電源 写真3 テスター

定電圧電源は12Vを発生させるためのものである。テスターは電圧を測るためである。

簡単に解析した結果、どうやら、私の基板より改造は簡単そうである。おおよそのことがわかったところで改造を開始する。以下にその方法を記載する。

まずは、基板上にある抵抗の足の片方を基板から引き抜く。引き抜く抵抗の足は、R6、R7、R16である。間違えて違う方の足を引き抜かないように注意!(私は間違えそうになった)


写真4 抵抗の足を引き抜く場所

裏から半田ごてで暖めて、ラジオペンチでエイヤっと引き抜く。抵抗のもう片方の足は引き抜かずにそのままにしておく。引き抜いたところは写真5のとおりである。


写真5 抵抗の足を引き抜いたところ(わかりにくくてすみません)

次に、チップ(PIC12C509)を作成する。チップのプログラムやその焼き込み方法は前回と同じである。チップは事前に足を水平方向に伸ばして先を切っておく。このチップに5Vのツェナーダイオードと240Ωの抵抗を半田付けする。ツェナーは、8番ピンからみて1番ピンが5Vの電位になるように付ける。さらに、1番ピンには240Ωの抵抗の片方を接続する(写真6参照)。8番ピンは、チップのグランド、1番ピンは電源(+5V)である。


写真6 チップとツェナー・抵抗の接続

これを基板上のICの上に両面テープで貼り付ける。貼り付けたところは、写真7のとおり。


写真7 チップを貼り付けたところ

このチップの足や240Ωの抵抗と、基板上のICや抵抗を接続する。接続する場所は写真8のとおりである。


写真8 接続箇所

写真8中の丸数字がチップの足に接続する部分を表している。A、B、Dは外した抵抗の足に接続する。また、240Ωの足は写真中にジャンパー線に半田付けする。ここには、8Vが来ているはずである。配線したところを写真9に示す。


写真9 配線したところ

また、基板上のコネクタにつながった赤と黒の線は、うっとうしい(?)ので取ってしまう。同時に基板の裏面も写真10のように改造する。


写真10 基板裏面の改造箇所

「接続」と書いてある○印の3箇所を半田でブリッジさせる。これは、赤と黒の線の代わりである。また、ジャンパー線を取り付けることで、キーレス受信機の「紫」と「紫/白」の線を12Vに接続する手間が省ける。これで、キーレス受信機基板の改造は終了である。あとは実車へ接続するだけである。

次に、実車への接続のためにコネクタに接続されている線を加工する。

「紫」「紫/白」「青」「青/白」は使用しないので、短く切断して絶縁処理をしておく(写真11参照)。


写真11 配線しない線の絶縁処理

また、灰色の線(ハザードライン)は2つのダイオードを接続しておく。ダイオードは、5A以上の整流用のものを使用する。接続方法は図1のとおりである。


図1 灰色線へのダイオードの接続

実車の配線へ接続する線には、割り込みコネクタを取り付けておく(写真12参照)。取り付けておくのは、「緑」「緑/白」「赤」「黒」およびダイオードに接続した線である。


写真12 割り込みコネクタ(っていう名前だっけ?)

 

実車への取り付け

実車(BMW E34)への配線は表1のとおりである。前回も書いたが、リアシートの下に取り付ける。

キーレス受信機側の線

実車の線

赤(電源ライン) 赤、または赤い電線に黒のラインが入ったもの
黒(グランドライン) 茶色の電線
緑/白(ロック線) 白い電線に赤いラインと黄色の点々マーク(細い線)
緑(アンロック線) 青い電線に赤いラインと黄色の点々マーク(細い線)
ダイオードに接続した線1 青い電線に緑のライン(少し太い線)
ダイオードに接続した線2 青い電線に茶色のライン(少し太い線)

なお、E34 525iは年式によりロック線やアンロック線の色が違う。以前にも書いたが、
 前期型  ロック線:白/赤/黄  アンロック線:青/茶/黄
 中期型  ロック線:黄/白/赤  アンロック線:青/赤/黄
である。ロック線やアンロック線は「黄色のコネクタ」の7番と16番に来ている線だそうである。私の車では黄色のコネクタは見つからなかった。純正キーレス付きだからであろうか。

以上で改造&実車への取り付けは完了である。これにより以下の機能が実現される(はずである)。

  1. リモコンのアンロックボタンを押すことでドアのロックが解除される(ダブルロックからも)。その際に、ハザードが2回ゆっくり点滅する。
  2. リモコンのロックボタンを押すことでダブルロックがかかる。その際に、ハザードが三三七拍子で点滅する。
  3. 三三七拍子点滅中にもう一度リモコンのロックボタンを押すと、開いている窓が自動的に閉まる(ウィンドウクローズ)。その際には、20秒間、2秒ごとにハザードが点滅する。
  4. ウィンドウクローズ中に、リモコンのロックボタンまたはアンロックボタンを押すと、ウィンドウクローズが止まり、ドアのロックが解除される(緊急停止モード)。

謝辞

最初に書いたように、今回の改造はインターネット上で知り合ったAさんの依頼によるものである。このような機会を与えてくださり、なおかつ「壊れても文句は言わない」と約束してくださったAさんに感謝する。
ちなみに、Aさんはチップの製作や改造に関して色々と気を遣ってくださり、仙台名物「萩の月&萩の調」までいただいた。萩の月、おいしかったですぅ(合掌)

 

独り言

また、マニアックなページを作っちまったよ。やっぱ、変な人だと思われるんだろうなぁ・・・・。


キーレス取り付けレポート − Aさんより

前述のAさんに無理を言って取り付けレポートを書いていただいた(感謝)。以下、そのレポートを紹介する。

 

To-Fit 新キーレス(改)取付けレポート by_A

プロローグ
E34に乗り始めてから8ヶ月、女房の軽自動車にキーレスが有り高級外車に無いのは悔しいと思いつつ、ある日BMW@FUN『E34メンテナンスQ&A』にキーレスについてのQ&Aがあり、後に大変お世話になるDDさんにダメ元でメールしたところ快諾を得て今回の取り付けまでに至った訳である。(感謝) 尚、基板改造経緯についてはDDさんの『キーレスの改造 − To-Fit新基板編』をご参照ください(DD注:このページのこと)

さぁ!取り付けだ
リアーシートを取っ払い、リレーボックス(?)近くの束線から該当する線を捜し、割込みコネクターを加締めるがこの時は緊張した(汗)間違えていないかもう一度慎重に考えてペンチでギュッと一気にやる。

  

親切にコード毎、どこに割込ませれば良いか書いてくれてホント助かりました。

よし、テストだ
実に簡単に配線も済み誤配線が無い事を確認後、いよいよ動作テストをする。
まずロックボタンを押す。ガチャとロック音と共にハザードが三三七拍子、、、思わず笑う。
アンロックボタンを押す。ロックノブが上がりハザードがゆっくり2回点滅。
窓を開けロックボタンを押し三三七拍子点滅中もう一度押す。窓がスルスルッと閉まってグッド!
緊急停止モードもパーフェクト、ブラボー、これで女房の軽自動車に勝ったぁぁぁ〜(笑)

黄色のコネクターについて

  

リレーボックスの蓋を止めている3本のタッピングビスを取り中を見るとリレーが2台あり上のリレーを外すと黄色のコネクターがある。このコネクターの7番ピンと16番ピンにロック線とアンロック線が来ている様だが、リレーボックスケースを外し逆さにしないとその実態は確認できない。

エピローグ
最初は部品だけ頼み自分でハンダ付けすればOKと思っていたが、届いた基板を見たらDDさんの物と違いバージョンアップしていた。諦めきれず遂には本体を送り解析から改造まで全て面倒を掛けてしまった。本当に面倒見の良い人だ。とにかく取り付けについて何の問題もなく無事終りE34専用キレース(?)に大変満足している。最後になりましたがDDさんには取り付けまで心配して頂き本当に感謝しています。

副産物?
お蔭様で私のE34も近代的に進歩したがロック&アンロックが面白く、何回も試してしまいバッテリーと電球に負荷を掛けている。ワハハッ、三三七拍子万歳!

 

 

Aさん、取り付けレポートありがとうございました。ちなみに、Aさんの車は、こんな車である。


Aさんの車(カッコいい〜!)

ホワイトウィンカー、ブラックキドニーグリル、アルミ、エアロがかっちょいい。写真ではわかりづらいが、シャドーラインも入っているかもしれない(?)。 こんな車にあおられたら、私なら間違いなく0.5秒で車線を譲ってしまう(笑)。



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