2023年10月7日(土)

IHKAの修理 − けろよんさんより

今回はけろよんさんよりIHKA(エアコンコントロールユニット)の修理レポートをいただいたので紹介しよう。そろそろ皆さんのE34のIHKAも怪しくなってきたころだろう。


このレポートは1994年式E34オート A/C コントロール ユニット(IHKA)の修理をしたときのメモである。詳細はmedama1gouさんkojiさんのレポートにあるので,そこに記述されていない情報を補足の記録として残しておく。

0) 症状
エアコンの動作が不安定で,始動時にしばらく効かない,急に送風状態になる,送風強度が若干波うつという症状が続いていた。エアコンガス充填やエアコンガスクリーニングを試みたが,冷えるときには十分冷えるのに,上記症状は改善されずにいた。先達のレポートを拝見して,これはIHKAが怪しいと判断し,IHKAを修理することにした。

1)準備
IHKAのコンデンサとトランジスタを交換するのは数が多く難儀なようである。以前,ファイナルステージ(通称,刀)を修理したときは,ハンダ吸い取り器やハンダ吸い取り線を使ったが,今回は個数が多いので新たな武器を用意した。はんだシュッ太郎とはふざけた名前だが,ハンダ吸い取り器とハンダこてが一体化していて,効率的に作業できる優れモノである。

  サンハヤト はんだシュッ太郎NEO(HSK-300) (https://shop.sunhayato.co.jp/products/hsk-300)

部品のハンダ付けでは,普通のハンダこてを使った。

2)IHKA取り外し
左ハンドルの場合,助手席側のグローブボックス,グローブボックスの上のカバー,グローブボックスの脇のトリムパネル,センタートンネルのカバーを取り外す。運転席側は,ペダルの上のトリムパネル,センタートンネルのカバーを取り外す。IHKAは刀のその奥にあり(写真1),左右に2個ずつコネクタがついている。このコネクタには4つとも,ロックがついていて,爪か細いドライバで押さえながら白いロックを持ち上げると,コネクタが外れる(写真2)。運転席側も同様にロックを外してコネクタを外す。IHKA本体は助手席側に斜め下に引き出した(写真3)。IHKA本体のラベルのように,BMW品番:64118367839,BOSCH品番:9140010224である(写真4)。IHKAには年式や仕様でいくつかの種類があるようだ。


写真1 IHKAの場所(助手席側から)


写真2 コネクタのロックの外し方(助手席側から)


写真3 IHKA本体を助手席側に引き出してるところ


写真4 IHKA本体のラベル

3)コンデンサ類の交換
medama1goさんのレポートにあるコンデンサとトランジスタを全て交換した。現物確認しないと必要な部品が分からないため,今回はmedama1goさんにお願いして部品一式を譲っていただいた。写真5に交換前の部品配置を示す。赤丸がフィルムコンデンサ(19個),青丸が電解コンデンサ(2個),緑丸がトランジスタ(2個),橙丸がタンタルコンデンサ(3個)である。基本的には取り外した部品と同じものを一つずつ確認しながら交換する。電解コンデンサとトランジスタは向きを間違わないように注意する。今回,タンタルコンデンサは故障時にショートする危険があるため,積層セラミックコンデンサに置き換えた(68μFは容量の近い100μFに変更した)。

部品取り外しのコツとしては,はんだシュッ太郎のこて先の穴をリード線に当ててはんだを溶かし,リード線が少し動くようになったらこてを基板に垂直に立てて,吸い取りボダンを押すとほぼ1回ではんだが吸い取れる。一度でうまくいかないときは,再度吸い取るよりは,新しいはんだを盛ってから吸い取る方がきれいに吸い取れた。背の高い部品は振動防止のためコーキング材で基板に止められているので,ナイフでコーキング材を剥がして部品を取り外した。部品交換後には,同様に基板用シリコンコーキング材(信越化学 RTVゴム)で固定しておいた。基板裏面(写真6)を見ると,大きな抵抗と遮熱版(?)のある周辺に熱がかかった跡が見られた。すべてのコンデンサを交換するのが面倒なら,放熱板に近い部品を優先的に交換するとよいかもしれない。写真7は交換した部品である。


写真5 交換前の部品配置


写真6 焼けた跡のある基板裏面


写真7 交換した部品

補足)
外したコンデンサの容量をテスターで調べたところ,2つの電解コンデンサと大きなタンタルコンデンサの容量が抜けており,他のコンデンサの容量には異常がなかった。トランジスタについては,調べていないので不明。

4)IHKA取り付け
IHKA取り付けは取り外しの逆の手順である。IHKAの向きに注意して助手席側から押し込む。途中で入らないようなら,運転席側から少し下に引っ張るとよい。コネクタは同じ色の基板側コネクタに合わせ,ロックの白いレバーを戻すと力を入れなくても固定される。コネクタを全て取り付けたらA/C動作を確認し,カバー類を元に戻して完了である。作業時間は,IHKA取り外しに1.5時間,部品交換に3時間,IHKA取り付けに1.5時間という感じであった。

所感
IG onですぐA/Cが効きだし,風量も安定していて快適である。IHKAはもう製造中止のようだし,このようなメンテで復活できるのは幸いというべきであろう。
最後に,medama1goさんはじめ先達の方々の情報のおかげで修理できたことに感謝します。


他のコントロールユニットと同様に、やはり経年劣化によるコンデンサの容量抜けが主な原因でIHKAがうまく動作しなくなるようだ。逆に言うと、コンデンサさえ交換してやれば、復活する可能性があるということだ。いつも有用な情報をいただくけろよんさんに感謝する。



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