2015年10月9日(金)

エンジン載せ替え「M50エンジン、シングルVANOSの対策部品」編 − ともパパさんより

今回のレポートは、エンジン載せ替えレポート の第5章だ。これが最終章か・・・?


未だに載せ替えたエンジンからの振動が直らないともパパ号ですが、今回はVANOSについてです。

VANOS付のM50エンジンはタイミングチェーンから異音が出る持病があります。 壊れたエンジンは全く音が出ませんでしたが、今のエンジンは例の振動が出る2100rpm辺りで「ガー」という音が鳴ります。でもチェーンの音よりもIN側のカムシャフト辺りで鳴っているような気もします(?)。この音がエンジンの振動に直接関与しているとは思えませんが、あんまり良い音ではないので直せるものなら直したいものです。ひょっとするとバルブタイミングの狂いから来る振動であれば確認する価値はありそうですよね。

音に関してはBMWから対策部品が出ており、1995年の3月以降に製造されたM50には対策部品が付いています。VANOSはIN側カムシャフトの位相をズラす仕組みですがスプロケットが可動する為のクリアランスが仇となってチェーンが暴れるのが異音の原因のようです。対策部品はプレッシャープレートとスペーサーリングが追加されてスプロケットのグラつきを抑える効果があります。1枚目の画像が95年3月以前、2枚目の画像がそれ以降のM50のカムチェーン周りの図です。9番のスペーサーリングが1枚だったのに対して対策後は9番の厚みが変更されて10番と11番が追加になります。それに伴って6番のスタッドボルトも長いものに変更になります。


95年3月以前


95年3月以降

壊れたエンジンを開封してみましたが対策部品は入っていませんでした。ともパパ号は95年登録ですが製造は94年10月ですので無理もありません。それでも異音が出ていなかったのはアタリのエンジンだったのかもしれませんね。結果的にはハズレでしたが(悲)。

今のエンジンからは微かにチェーンの音が出始めているので今後の為に対策部品を入れてみようと思います。その為にはVANOSを外す必要がありますので壊れたエンジンで練習してから本番に臨む予定です。2本のカムシャフトを固定するツールとOUT側のスプロケットを回すツール、フライホイールを固定するツールとテンショナーを押さえておくツールがそれぞれSSTとして用意されているようですが何一つ持っていません。まあ、何とかなるでしょう!

その前にVANOSが本当に作動しているのか?という疑問が沸きました。そのためにマニュアルVANOS実験をしてみようと思います。先日エンジンハーネスを交換した際にVANOSのソレノイドスイッチへ繋がるコネクターに+と−の刻印を発見しました。ちゃんとソレノイドが作動しているかを確認するため12Vに繋いでみるとカコカコと作動します。

E34のM50はシングルVANOSなので吸気側しか作用しませんが、機能としてはアイドリング時には吸気バルブタイミングを遅らせて回転を安定させ、中速域は逆にタイミングを進めてトルクの増大とEGR効果でキレイな排気ガス。そして高速域はまたタイミングを遅らせてパワー感の落ちが無いようにするものだと理解しています。吸気バルブの位相を最大12.5度進める事が出来るようですが、エンジンを掛けた状態で意図的にソレノイドを作動させればどうなるのでしょうか?

ソレノイドに繋がるコネクターを抜いて直接12Vを通電してみます。アイドリング状態で繋ぐと1秒程で位相の変化が分かります。さっきまで安定していたアイドリングがドォドォドォドォ・・・と酷い不整脈です。吸気と排気のオーバーラップが長すぎて安定しないんだと思いますが、凄い排圧と重低音です。吹かすと回転が落ちた時にアイドリングが効かずエンストしてしまいました。

中回転域ではソレノイドを作動させない方がエンジン音は静かです。通電させると「ガー」という音が少し大きくなる代わりに回転が軽やかになります。空吹かしのレスポンスも良いのでバルブタイミングの進角は効果があるようです。高回転域でソレノイドを作動させるとエンジン音が大きくなって同じアクセル開度のままでは回転が落ちてしまいます。吸排気に慣性力がついている高回転域ではオーバーラップは少ない方が良いのはこの為でしょうか、しっかりと混合気をシリンダー内に詰め込んであげないといけない訳ですね。

ソレノイドのコネクターを抜いたままで乗ってみましたが、やっぱり中速域にトルクの谷間を感じます。回転上昇も遅くて車速の伸びがありません。でも3500rpm辺りから急に元気になるあの特性は健在で、VANOSが機能するともう少し下の回転域からトルクを発生していて全体的にフラットな特性にしてある事が分かります。機能を切ってみてVANOSの効果が実感できました。車内から配線を引いてスイッチで動作を制御できたら面白いかもと思いましたが、想像以上に回転がギクシャクするので制御はDMEにお任せした方が良さそうです。

VANOSがちゃんと機能していて想像以上に効果がある事が分かったので、今度は構造を勉強するために壊れたエンジンを分解してみました。想像より構成部品は少ないですが、動きを見ればなるぼど〜!と言う感じです。電磁ソレノイドが作動すると油路選択のピストンを押し込む方向に動きます。油路が開通されると油室内にオイルが入って行ってピストンが押され、同軸上にあるスパイラルギアが飛び出して来ます。ソレノイドの作動が切れると油路選択のピストンがスプリングの力で戻されて今度は反対側の油室にオイルが入ってスパイラルギアを引っ込める方向にピストンを押し戻します。一連の動作時間はその時の油圧状態にもよりますが、先のマニュアルVANOS実験をした時はアイドリング状態では1秒足らずでした。

このスパイラルギアには外歯と内歯が切ってあって、外歯はスプロケットに、内歯はカムシャフトに噛んでいます。スパイラルギアが飛び出す事で斜めに切られた歯に沿ってカムの位相が変わる仕組みですが、スパイラルギアの突出量が1.5cm程しか無いのに12.5度もの角度変化を滑らかに変化させる辺りに工夫がありそうです。

スパイラルギアの内歯と外歯を見ると、角度を変えてありました。突出量に対しての作用角度が単純な比例関係ではありません! 凄いと思いませんか?! 感心してしまいました。スパイラルギアは引っ込んだ状態がホームポジションで、その時にIN側カムシャフトは遅角状態にあります。ソレノイドが作動してスパイラルギアが飛び出した時だけ進角になるので、VANOSの作動時間は中速域のみの僅かな時間だと言う事が分かりました。また、マニュアルVANOS実験では全進角か全遅角しか試せませんでしたが、本来は無段階調整という事なのでファジー制御されている可能性があります。ハーネスに電球を割り込ませてVANOSの作動状態を車内からモニタリングするのも面白いかもしれません。何かと好みが分かれるVANOSですが、M50の場合は絶対的なパワーを求めるのではなくて、全回転域に渡ってフラットなトルク特性にする事と、低燃費・クリーンな排ガスを求めたデバイスである事が分かりました。実際に分解して構造を見てみると実に興味深いものです。

壊れたエンジンでVANOSユニット脱着手順の練習も済んだところで、注文してあった対策部品も全部揃いました。いよいよ現役のエンジンに着手します。対策部品は画像の物になります。

内訳としては、2mm厚スラストワッシャー(11 36 1 403 822)、4mm厚スラストワッシャー(11 36 1 403 823)、プレッシャープレート(11 36 1 403 550)、スタッドボルト×3(11 36 1 403 824)これに加えてVANOSユニット脱着に必要な、ガスケットリング(32 41 1 093 596)、ガスケット(11 36 1 740 840)も用意します。ふざけているのが価格で、スタッドボルトは1本が1252円もします。さらに酷いのが4mm厚のリングが2980円、2mm厚のリングが9028円もします。意味不明ですよね。

まずは冷却ファンとシュラウドを外してからクランクプーリーを車の前から見て時計回りに回して1番の圧縮上死点に合わせます。

本来ならこの位置でエンジンとATの結合部にあるサービスホールからSSTを突っ込んでフライホイールを固定する訳ですが、無いのでこのままいきます。なのでクランクシャフトが簡単に回らないようにプラグは外しません。この状態でヘッドカバーを開けると両方のカムシャフト後端の四角い部分はシリンダーヘッドに対して水平になっているはずです。

カムシャフトも本来はこの状態で固定するSSTが存在しますが、無いので四角いシャフトのドライバーとクランプで固定しました。ここもこれでいけます。

VANOSユニット前側にある19mmのボルトを2本外して空いたサービスホールを使ってEX側のスプロケット固定ボルトを緩めます。本当はこの下にある1次側のチェーンテンショナーも緩めるようですがそのままでいけます。さらにVANOSユニットの固定ナットも外しておきます。

その他、油圧ラインとソレノイドスイッチのコネクターを外します。

EX側のスプロケット固定ボルトを緩めると2次側のチェーンのみが動くようになるので、スプロケットを左右に揺すりながらVANOSユニットを前側に引っ張って外します。VANOSユニットとヘッドの間にあるガスケットは、最終型は金属板のプレス製ですが、93年式のエンジンは紙製でした。結果的にこれを剥がすのがいちばん大変でした。

IN・EX両方の2次側チェーンとスプロケットに合いマークをしたらテンショナーを押し込みます。このテンショナーも引っ込んだままにするSSTが存在しますが硬い針金で代用できます。私はバネ鋼を直線に伸ばして使いました。

これで2次側チェーンとスプロケットがフリーになますのでバラバラにせずに一体のままの状態で外します。IN側スプロケット裏側のリングは再利用しますが3本のスタッドボルトは対策部品の長い物に交換するので外します。

ここから組み付け工程ですが、IN側から行ないます。普段は手ルクレンチですが今回は基本に忠実にトルクレンチを使って規定トルクで組む事にします。カムシャフトのパルス発生リングとスペーサーリングを入れたら対策部品のスタッドボルトにネジロックを塗布して組み付けます(22Nm)。この時、1次側チェーンが通っている穴に部品が落っこちないようにペーパータオル等を詰め込んでおくと安心です。

チェーンとスプロケットのズレが無い事を確認してから2次側のチェーン周りを装着します。バーニアスプロケットなのでスタッドボルトを中心に左右どちらにも振れる事を確認したら、右回りいっぱいの位置をキープしながらスタッドボルトに2mm厚のリング→プレッシャープレート→4mm厚のリングの順に入れます。各リングの接触面にはオイルを塗布して、既存のナット3箇所で均等に締め付けます(10Nm)。ここにもネジロックを使いました。

次にVANOSユニットを装着しますが、その前に新しいガスケットを入れてから左右両端の位置合わせ嵌合部に液体ガスケットを塗布します。

VANOSのスパイラルギアをいちばん引っ込めた状態で、IN側スプロケットに差し込みながら2次側のチェーンのみを左回りに少し回すと入ります(練習した時は入りました)。が!! 対策部品を入れたことでIN側スプロケットが圧着されているため、2次側のチェーンが簡単に回りません。ここでEX側スプロケットを回すSSTが必要になる訳ですが、カムシャフト後端の締結を解除して、EX側スプロケットを仮固定してからEX側カムシャフトごと回せば、2次側のチェーンが回ります。そのためには、クランクシャフトを回転させて2次側のチェーンを回し、スパイラルギアが噛む位置を探す事になります。スパイラルギアが噛んだら、クランクシャフトを左に回しながらVANOSユニットを入れます。

この工程はエンジンを逆回転させる御法度作業なので、変な感触があったら無理をしないようにします。VANOSユニットが入ったら、EX側スプロケットの仮固定を緩めてクランクシャフトとカムシャフトを元の位置に回して再びカムシャフト後端をクランプで固定します。続いて、VANOSユニットを固定しているナット6個(10Nm)と13mmのボルト2本を締めます(22Nm)。油圧ラインのガスケットリングも用意した新しい物に交換して接続し(32Nm)、ソレノイドスイッチのコネクターも接続します。また、シリンダーヘッドとの接合面にできる溝にも液体ガスケットを塗布しておきます。

ここで再びクランクプーリーを見ます。先程の作業によってクランクシャトの位置がズレているので、再び1番の圧縮上死点にキッチリ合わせます。カムシャフト後端の四角い部分が水平状態で固定されている事も確認してから、EX側のスプロケットを固定するトルクスボルト4本を締め付けます。ここも1次側・2次側ともにバーニアスプロケットなので、いくらでもタイミングが狂う危険性があります。この固定がバルブタイミングに大きく関与してくるので、位置関係を何度も確認してからネジロックを塗布して締め付けました(22Nm)。スプロケットの固定が済んだら、サービスホールとして使った19mmのボルト2本を組み付けます(50±5Nm)。

組み付けが全部完了したら、念のためクランクシャフトを2回転ほど右回りに手回しして、バルブクラッシュが無い事を確認します。スムーズに回る事が分かったら、クランクプーリーを再び1番の圧縮上死点の位置に合わせた時に、両方のカムシャフト後端の四角い部分がシリンダーヘッドに対して水平になっている事をもう一度確認します。問題無ければ新しいヘッドカバーガスケットを入れてヘッドカバーを装着します。私は液体ガスケットは全周には塗布せず、後ろ側の半月部の角部分にしか使いません。

イグニッションコイルのコネクターを抜いたままでクランキングしてオイルを回します。全て配線を戻して、いよいよエンジンを始動します!

無駄な音が一切消えて一体感のある軽やかなエンジン音となりました。回転を上げても今までのような耳触りな雑音がありません。対策部品の効果は凄いです。例の振動は作業前と変わっていませんが、原因としてバルブタイミングの狂いも視野に入れていたので、その辺も含めてシリンダーヘッド周りを確認する目的もありました。これ以上エンジンの振動を追求するにはエンジンをバラしてクランクシャフトのバランスを見る必要が出てくるので、この辺でやめる事にします。マウント類を交換した現在、普通に走っている分には全く気にならないので「空吹かし禁止!」という事で封印する事にしました(苦笑)。

今回の作業はSSTを使わずに少々強引な部分もありましたが、DIYでも何とかなります。手技自体もそんなに難しくはないので、のんびりやっても半日あれば終わります。95年3月以前製造のVANOS付きM50エンジンでカムチェーン辺りから異音が発生している車にお乗りの方はお試し下さい。なお、ド素人が行なった整備のため間違いがあればご指摘頂ければ幸いです。

ヘッドガスケット抜けからエンジン載せ替え、エンジンからの謎の振動に対する対策、VANOSの対策部品組み付けまでの連投失礼しました。普通であれば間違いなく廃車になっている大惨事ですが、E34仲間の皆さんに助けられてともパパ号は何とか路上復帰を果たすことができました。この場をお借りしてお礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。


エンジンのヘッドガスケット抜けからの見事な復活だ。単に修理するだけではなく、調子の良いエンジンとOHしたATに載せ替える辺りが、ただでは起きないともパパさんらしい。

末尾ではあるが、悲惨な状況の中、期待以上の復活レポートをいただいた ともパパさんに感謝する。


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