2004年12月28日(火)

電動シートリクライニングとシートリフター修理 − ミッチョさんより

E34の電動シートは、ヘッドレストが動かなくなったりリクライニング機構が動かなくなったりすることが多く、これも持病の一つだろう。

今回は、ミッチョさんから、電動シートのリクライニングとシートリフター機構の修理レポートが届いたので紹介しよう。


電動シートはとても便利だが、10年もすると電動機構が動かなくなるトラブルが非常に多い。私のM5も運転席のシートリフターが右側しか動かず、右のおしりだけが持ち上げられる状態であった。

また、先日、高速道路のサービスエリアで妻がシートをリクライニングさせて休憩をした後、シートバックが左側しか起きなくなってしまい、帰路は腹筋運動を強いられる状態となってしまった。そこで、シートの電動機構を修理することにした。

このメンテ方法は、モーターの動く音はするがシートが動かないというトラブルに適用できるものである。本当はワイヤーを新品に交換するのがよい。しかし、エコの観点からワイヤーを再利用する方法を取ることとした。決してお金が無いからではない。(嘘)

図1はシートの電動機構である。


図1 シートの電動機構

トラブルが多いのは、モーターの動力をワイヤーでギアボックスに伝える構造の「リクライニング」「シートリフター」「ヘッドレスト」部分である。

ヘッドレスト用モーターはシートバックからアクセスできるので、比較的簡単に修理することができる。この部分はDDさんのメンテナンス記録にあるので、今回は「リクライニング」と「シートリフター」のメンテナンスレポートをすることにする。

「リクライニング」と「シートリフター」のモーターはシート座面裏側の前端、ちょうど大腿の下あたりにある。これらの調整・修理にはシートを外して裏返す必要がある。

シートをバラす前には、次の点に気をつけたほうがよい。

左右のギアのうち、どちらかだけが動いたために左右アンバランスで、ねじれた状態になっている場合は、左右の位置を合わせてから作業に入ったほうが、組み上げるのが楽である。予防整備の場合は、位置合わせは必要ない。

シートの外し方

  1. シートを前にスライドさせ、シートレール後端の星型のトルクスボルト(写真1)を抜く。私はトルクスのソケットコマ(E14)を使用したが、普通の六角ソケットコマでも緩めることができるらしい。元に戻すときに、普通の六角ボルトに交換すれば、次回は簡単に緩めることができる。


写真1 星型のトルクスボルト

  1. レールの前方はフックに引っ掛かっているだけである。シートを後方にスライドさせ、後部を持ち上げて前方に押し出すことでシートの固定を外すことができる。
  2. シートベルトアンカーの高さを調整する細いワイヤーが、シート下の後部に接続されているので、固定ピンを抜いてワイヤーを外す。このピンは無くしやすいので注意が必要である。
  3. 電源ハーネス、シートベルトを外す。

これで、シートは車外に出すことができる。しかし、重いので一人で出すのは大変であるし、リクライニングが動かない状態だと出すことも難しいかもしれない。私は車内で裏返して作業することにした。その際は、シートレールでBピラーやコンソールに傷を付けないように気をつける必要がある。私は傷つけた(涙)

写真2は助手席シートの裏側である。


写真2 助手席シートの裏側

この状態ではモーターへのアクセスが難しく、作業性が非常に悪い。また、運転席側はコントロールボックスが邪魔でアクセスできないため、シートとシートレールを分離する。

シートレールとシートは四隅のロックピン(緑色の矢印)を抜くことで分離できる。前か後ろの2本を抜けば、モーターへのアクセスが楽になる。写真3、4は運転席シートの後ろ側のロックピンを抜いて開いたところである。


写真3 運転席シートを開いたところ(1)


写真4 運転席シートを開いたところ(2)

ただし、シートスライドさせて位置合わせをしておかないと、ピンをうまく叩き出すことができないので、注意が必要である。

写真5のように、モーターを外すとギアボックスにつながるワイヤーを外すことができる。


写真5 ギアボックスにつながるワイヤー

モーターを外す際にスペースが無いので、ボックスのラチェットレンチは使えない。スパナかめがねレンチでネジを緩めることになるが、8mmの板ラチェットレンチがあると便利である。

駆動用のワイヤーはモーターの左右からそれぞれ左右のギアボックスつながっている。案の定、中のワイヤーが短くなっているのが分かる。ワイヤーを奥まで押し込んだ状態で15mm程度出ていないといけない。金属ワイヤーが縮むとは考えられないので、ビニールの被覆が伸びたのだろう。

金属製のスリーブを力技で引き抜き、被覆を10mmほどカットする。(写真6)


写真6 被覆の切断

私はすべてのワイヤーが17mmほど出るようにした。(写真7)


写真7 ワイヤー長さの調整

写真8は修理前と後のワイヤー比較である。


写真8 修理前後のワイヤーの比較

金属製スリーブのかしめを起こし、ビニール被覆にかぶせてモーターにセットする。(写真9)


写真9 モーターへのセット

すべての動作が正常に行われるかを確認して、元通りに組み上げれば修理完了である。

シートをバラす前にシートバックなどの「ねじれ」が無いよう、左右の位置あわせをしたほうがよいと最初に書いたが、それをしっかり行わなないと、最後に次のような非常に楽しい作業が待っている。

  1. シートとシートレールを固定するピンの位置がうまく合わずに、なかなかロックピンが入らない。
  2. シートを車両に固定する際に、トルクスボルトの位置がうまく合わなかったり、片方のレールが浮いたりする。
  3. 完成!と喜んだのも束の間、シートバックやシートリフターが傾いていることに気づき、また最初からバラすはめになる。

私はこの楽しい作業を何度も楽しんだ。なんと幸せな気持ちにさせてくれる車であろう。


電動シートのリクライニング機構が動かなくなっている方には、非常に役に立つレポートだろう。ディーラーに頼めば、少なくともワイヤーを新品に交換されるので、結構な金額になるが、このようにDIYならタダで修理できる(工具は必要だが・・・)。

末尾ではあるが、いつも有用な情報をいただくミッチョさんに感謝する。でも、DDと文体が似ているかも・・・(笑)。



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