2006年7月6日(木)

E39サイドブレーキの調整 − ミッチョさんより

今回は、ミッチョさんよりE39のサイドブレーキ(パーキングブレーキ)の調整方法のレポートをいただいたので紹介しよう。基本的には、E34も同じ方法で調整できるそうだ。


パーキングブレーキの調整 E39の場合

リペアマニュアルによると、パーキングブレーキ調整が必要なのは、次のような場合である。

  1. レバーを1ノッチ引いた状態でブレーキが作用している場合。

  2. ホイールの回転力の差が大きい場合。(シャシーダイナモ上で30%以内)

  3. パーキングブレーキでブレーキをかけられない場合。

  4. 操作ストロークが10ノッチ以上ある場合。

現在、写真1のように12ノッチ引いても、アイドリングのクリープを止められない状態で調整が必要である。


写真1 12ノッチ引いたところ

パーキングブレーキは、レバーを引き上げることによってワイヤーを引っ張り、リアディスクローターの内側に入っているドラムブレーキのブレーキシューを外に広げてローターに押しつけて止める構造だ。

引き代の調整は、ブレーキレバーの根本にあるボーデンケーブルの固定ナットでもできるが、ブレーキシューとローターの隙間を適切にしておくことが前提となる(基本調整)。

以前、E34の530でリアのハブ付近から異音が出ていたことがあり、ディスクローターを外してみたところ、パーキングブレーキーのブレーキシューが、粉々になっているということがあった。

今の愛車、E39もリアディスクを回転させると、少しこすれるような音がしているので、ブレーキディスクを外して内部を確認・清掃しがてら、サイドブレーキの基本調整をすることにした。

【基本調整作業】

1 サイドブレーキレバーのカバープレートを外し、ボーデンケーブルをゆるめる。

図1のように、カバープレーをを外すと写真2のようなボーデンケーブルの固定ナットが見える。


図1 サイドブレーキカバーの取り外し


写真2 ボーデンケーブル固定ナット

まず、このケーブルをゆるめてからブレーキシューの調整をするのだが、早速つまずいてしまった。狭い場所であるうえに12mmの調整ナットを9mmのナットでロックしてある。

まず9mmのロックナットを回す必要があるが、このサイズのレンチを持っていない。唯一、1/4インチのラチェットに9mmのコマがあったが、普通のコマでは届かないため、ディープソケットが必要だ。

12mmのナットの方は、めがねレンチがかかるが、回転させることはできない。リペアマニュアルを見ると、図2のようなスペシャルツールを使うようになっている。9mmのロックナットと12mmのナットの両方を回すことができるツールだろう。


図2 サイドブレーキ調整用スペシャルツール

スペシャルツールなしで調整するには、コンソールボックスを外してスペースを確保するか、9mmと12mmのディープソケットを用意する必要がある。こんなナットを外すだけのためにコンソールを外すのは癪なので、ディープソケットを買いに行くことにした。

こうして車を触るたびに、また工具が増えていくのであった・・・。

2 調整ボルトを回して、ブレーキシューのクリアランスを調整する

リペアマニュアルによると、ブレーキシューのクリアランスは下記の手順で調整する。

(1) ジャッキアップしてホイールボルトを1本抜き取り、真下に合わせる(図3)。


図3 調整穴

(2) ホイールボルトの穴にマイナスドライバーを差し込んで、調節ボルトをホイールが回転できなくなるまで締める(図4)。


図4 調整方法

(3) 調節ボルトを逆方向に12ノッチゆるめる。

これだけの情報で調整できる人は、内部構造を熟知した人だけだろう。位置関係がわかりやすいように、また内部の清掃を兼ねて、ブレーキローターを外して内部を確認してみた。

ブレーキのアッセンブリーを取り外してブレーキローターを外してみると、内部から大量のブレーキダストが出てきた(写真3)。


写真3 ブレーキディスク内部の大量のダスト

ブレーキアッセンブリーを取り外すのには、これまた普通はあまり使われない7mmの六角レンチと、16mmのレンチが必要だ。

写真4がパーキングブレーキのシュー部分で、写真5が下部にある調整ボルトだ。


写真4 パーキングブレーキのシュー部分


写真5 パーキングブレーキ調整ボルト

写真6・7の要領で、真下にあわせたホイールボルト穴からマイナスドライバーを差込み、回転させて調整する。


写真6 調整ボルト調整方法


写真7 調整ボルトの調整方法2

もちろん、ブレーキローターを取り付けた状態で行わなければならないので、位置関係をよく理解しておかないと調整は難しい。ましてや、ホイールを取り付けた状態だと、もっと難しいような気がする。

右側は下方向に、左側は上方向に回転させることで、ブレーキシューとローターの間隔を狭めることができる。E34もアジャスター位置が少し違うだけで、調整方法は全く同じだったように記憶している。

ブレーキローターを取り付け、ローターを回せなくなるまでこのアジャスターを回転させ、12ノッチ戻すことでこの部分の調整は完了である。

サイドブレーキの調整だけならブレーキを外す必要もないが、外したついでにキャリパーやパッドの点検も行った。写真8がリア右のブレーキパッドとパッドセンサーだ。


写真8 リアブレーキパッドとバッドセンサー

ブレーキパッドは十分に残っているが、ブレーキローターは磨耗してきているので、次回のパッド交換時には、ローターも交換の必要がありそうだ。

パッドセンサーはパッドが磨耗してくると、センサー部分がローターで削られて断線し、警告が出るようになる。一度切れてしまうと、交換が必要になる。このセンサーはリアは右、フロントは左だけに取り付けられている。E34と少し形状が違うが、基本的な構造は同じだ。

ブレーキのピストン部分もきれいで、シール類に損傷もなさそうであった。

3 ボーデンケーブルの調整

次の条件を満たすようにケーブルを調整する。

  1. ブレーキレバー2ノッチ引いて、ブレーキ作用が始まるように調整する。

  2. レバーを戻し、ホイールが自由に回転しすること。

  3. レバーを戻した状態で、イグニッションスイッチONで警告等が消えていること。

  4. レバーを1ノッチ引いた状態で、ブレーキ作用はなしで、警告灯が点灯する。

  5. レバーを2ノッチ引いて、ブレーキ作用が始まり、警告灯が点灯する。
    ※ 警告灯が点灯しない場合は、パーキングブレーキレバーのシフトコンタクトを調整する。

ロックナットでロックすれば、手で行える調整は終了だ。

リペアマニュアルによると、更にシャシーダイナモで次の確認をするように記載されている。ここまできちんとやるとは思えないが・・・。参考までに記載しておく。

(1) レバー0ノッチ(パーキングブレーキはゆるんでいる状態)
 ATはニュートラル位置で、アイドリング時のホイール回転力≦150N

(2) レバー第1ノッチ
 ブレーキフォース上昇なし。警告灯/表示灯が点灯すること

(3) レバー第2ノッチ
 警告灯/表示灯が点灯すること。

(4) レバー第3ノッチ
 ブレーキフォース表示が500N+50Nに達するまで、ボーデンケーブルを再調整する。


いつものことながら、図と写真を使って非常にわかりやすく記述されている作業レポートだ。これならDDにもできそうなので、いつかやってみよう。

末尾ではあるが、いつも詳しくわかりやすいレポートをいただいくミッチョさんに感謝する。



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