2020年10月31日(土)

E63 リアアッパーアームとガイドアームの交換 − Sさん号

最近、一緒にメンテするSさんの630iを車検に通すため、ブーツが破れているリアのアッパー(コントロール)アームとガイドアームを交換したが。その際にちょっとお手伝いしたので報告しよう。

リアのアーム類を交換するときには、最後に「ノーマルポジション」で締め付けなければならない。そこで、車をジャッキアップする前に、写真1のように車軸を通るようにテープを張り、重力がかかっているときの車軸の位置の目安とする。交換作業中、テープは外してもいいが、目印のためにテープに端の部分は車体に残しておこう。


写真1 車軸位置の目安

その後、写真2のようにジャッキアップしてウマをかけてからホイールを外す。


写真2 ジャッキアップしてウマをかけたところ

アッパーアームは写真3のところにあり、赤矢印で示したボルトナットと、緑矢印で示したナットを外せば、取り外すことができる。これらを取り外す前にABSセンサーやブレーキパッドセンサーのケーブル類をアッパーアームから外しておこう。手順の詳細は、このレポートを参照のこと。


写真3 アッパーアーム

ただし、赤矢印の18mmのボルトナットは100Nm、緑矢印の21mmのナットは165Nmで締まっている。そのため、特に緑矢印のナットを外す際には、写真4のように超ロングのブレーカーバーを使うと簡単だ。


写真4 超ロングブレーカーバーで外しているところ

写真5に新しいアッパーアームと取り外したアッパーアームの比較を示す。


写真5 アッパーアームの新旧比較(上:新、下:旧)

古いアッパーアームのボールジョイントのブーツは、写真6のように見事に裂けている。


写真6 避けていたアッパーアームのブーツ

一方、ガイドアームを外すには、写真7の赤矢印のボルトナットと緑矢印のナットを外せばいい。


写真7 ガイドアーム

赤矢印のボルトナットは、写真8のようにエキセントリックボルト(偏心ボルト)になっており、リアのトー角を調整できるようになっている。すなわち、これがずれるとリアのトー角がずれてしまう。そこで、このボルトを外す前に、写真8のようにマジックで印を付けておく。


写真8 マジックで印を付けたところ

この16mmのボルトナットは65Nmで締まっている。車体後ろ側にあるボルトを固定し、車体前方側にあるナットを回して緩めればいい。写真9に外したエキセントリックボルト、ワッシャ、ナットを示す。


写真9 外したエキセントリックボルト、ワッシャ、ナット

ボールジョイント側の16mmのナットも65Nmで締まっているので、これを外すとガイドアームを外すことができる。写真10にガイドアームの新旧比較を示す。


写真10 ガイドアームの新旧比較

後は新しいアーム類を取り付けるだけだが、そのまえにボールジョイントのところのグリスをチェックしておこう。ボールジョイントのブーツを外すために、写真11のようにボールジョイントのブーツ固定金具を外す。


写真11 ブーツ固定金具を外しているところ

ブーツをめくることができたら、中に入っているグリスをパーツクリーナーで洗い出し、写真12のように新しいグリスをたっぷりと入れる。


写真12 グリスを入れているところ

なお、新しいアッパーアームやガイドアームの取り付けは取り外したときの逆手順だが、写真13のようにジャッキでノーマルポジションまで後輪を持ち上げた状態でボルトやナットを規定トルクで締め付ける。


写真13 ノーマルポジションまで後輪を持ち上げているところ

規定トルクは上述の通りだが、特にアッパーアームの外側のナットは165Nmと高いトルクで締めなければならないので要注意だ。また、ガイドアームの奥側のボルトは偏心ボルトなので、取り付け前にマジックで印を付けたおいたところに合わせて締め付けないといけない。

左右のアームを交換したら、ホイールを取り付ければ作業完了だ。ガイドアームのエキセントリックボルトの取り付け位置は、ホイールアライメントが狂わないように取り外し前の位置と同じにしているが、そもそも新旧のガイドアームの長さが全く同じとは限らない。厳密には、ガイドアーム交換後にリアのアライメントを測定し、調整しておいた方がいいだろう。



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