2003年1月16日(木)

ステンレスメッシュブレーキラインへの交換 − BJさん&キャノンさんより

最初に断っておくが、今回は(も?)私の車のメンテナンス記録ではない。

BJさんからキャノン号のブレーキホースをD.I.Y.にてステンレスメッシュのものに交換したとのご報告があり、またしても「画像&解説」付きでメールしていただいたので、それを紹介しよう。

警 告

ブレーキ系はご存じのように最重要保安部品である。この作業自体は最低でも2人必要だし、細心の注意を払って行うべきものである。作業自体にも危険が伴う。もちろん、作業にミスがあると最悪の場合ブレーキが効かなくなり、運転中にどこかに突っ込む事もある(自損だけでなく、例えば登下校中の子供の列に突っ込む可能性もあるわけだ)。実際の作業は、この作業に詳しい方とともに行って欲しい。

このページは、ブレーキラインの交換作業のイメージを掴んでもらうためのものであり、作業に詳しくない人がこのページを参考にしてブレーキラインを交換することを推奨するものではないことを明記しておく。

・・・・と、さんざん脅したところで、作業内容を紹介しよう(笑)。


作業に必要なモノ

写真1は必要な工具類である。左から順に、ラチェットフック、11ミリレンチ、7ミリレンチである。


写真1 必要工具

写真のラチェットフックは、13〜17ミリまでの自由レンチであるが、ラチェットで締め緩めが自在にできるものである。これがないときはモンキーレンチで代用しても良い。

写真2は、今回の作業で使用したロッキード製のブレーキフルードであり、この程度の沸点レンジで大丈夫だ。なお、以下の説明で「オイル」と記述されているものは、特に指定のない限り「ブレーキフルード」のことである。


写真2 今回の作業で使用したブレーキフルード

写真3は、BJさん特製の「BJスペシャル・オイルチャージ・アシストボトル(爆)(R)」である。「(爆)」までが登録商標になっていることに注意いただきたい。これを使えば、ブレーキフルードをこぼさずにタンクに入れることができる優れものだ。


写真3 BJスペシャル・オイルチャージ・アシストボトル(爆)(R)

写真4は、作業時に必ず行わなくてはならないウマ掛けである。ウマを掛けるだけでなく、ボディの下にタイヤも入れておく。


写真4 ウマ掛け、およびボディの下にタイヤを入れたところ

ジャッキで持ち上げただけで作業しようとしている人もいるかもしれないが、車を持ち上げて何かを作業するときには、面倒でも必ずウマを掛けてボディの下にタイヤを入れて欲しい。脅かすわけではないのだが、ジャッキで持ち上げただけでは不安定であり、万一、ジャッキが倒れてきた場合には命を失う危険もある。ウマを掛けずに作業をするのはリスクが大きすぎ、車の整備ぐらいで命をかけるのはバカらしいので、必ずウマを掛けてから作業して欲しい。「命掛けずにウマ掛けろ」である。(←あまりにもオヤジくさいので削除)


交換作業

まずは、前二輪のブレーキホースを交換する。写真5は交換前のブレーキホースである。ご覧の通りのゴム(合成樹脂?)製だ。


写真5 前輪のブレーキホース(交換前)

ブレーキホースは、その両端が車体側のアルミパイプラインやキャリパー側へ接続されている。この接続部分は雄雌のスクリュージョイントである。両端のスクリュージョイントを外すと、ブレーキホースを外すことができる。

ブレーキホースを外すためには、まず、車体側の雄ネジを11mmのレンチで固定しつつホース側の14mmの雌ネジを回して車体側のスクリュージョイントを外す。雌ネジ側を回す際に、上述のラチェットレンチがあれば非常に便利である。

交換前のブレーキホースには、ブレーキフルードが詰まっており、その接続先のアルミパイプラインにもブレーキフルードが詰まっている。ただし、ブレーキホースの交換時にはブレーキラインには内圧がかかっていないし、ブレーキフルードの粘性も高いので、ブレーキホースを外してもブレーキフルードが大量に漏れてくることはない。

車体側のスクリュージョイントが外れたら、同様にしてキャリパー側も外す。キャリパーへはホース側が雄として繋がっているため、車体側を先に外すとホースがねじれずに簡単に外すことができる。一方、取り付けの際には、逆にキャリパー側から先に接続すると良い。なお、接続前には新しいホースを軽く吹いて中の詰まりをチェックする事が必要である。

写真6は交換前後のブレーキホースである。もちろん、上が交換後のステンレスメッシュブレーキホースで、下が交換前のブレーキホースだ。


写真6 交換前後のブレーキホース

ステンレスのブレーキホースはゴム(合成樹脂?)製のホースより細いのがおわかりいただけるだろうか。

写真7は、交換後のブレーキホースである。取り付け後は、周囲をブレーキクリーナー等でしっかりと脱脂し、付着したフルードはできるだけ拭き取る必要がある。ブレーキフルードは侵食性が高いので、ボディなんかに付いたらすぐにふき取らないと塗装が剥がれてくることもある。


写真7 交換後のブレーキホース

写真8はエア抜き作業である。ご存じのように車のブレーキは油圧で動作しており、ブレーキホースの中で加圧されたブレーキフルードがピストンを押すことによってブレーキがかかるようになっている。そのため、ブレーキホースの中に気泡があっては、加圧したときに気泡だけがつぶれてピストンにまで圧力が伝わらず、ブレーキが効かなくなる。そのため、ブレーキホースを交換した後は、その中に入っている空気を押し出してやる必要がある。これがエア抜き作業である。


写真8 前輪ブレーキのエア抜き作業

エア抜き作業は、一旦、前輪2つのホース交換を終了させてから行う。この作業を行うためには二人の人間が必要だ。エンジンをかけ「一人が1・2・3とかけ声とともにブレーキペダルを踏み直し踏み続けた状態で声で合図し、その合図と共にもう一人がブリーダーバルブを緩めて、ブレーキフルードが出切ったら締める」を3回程繰り返せば、そのホースのエアは抜けるはずである。このとき、ブレーキペダルを踏む人は、しっかりと踏み込んでいなければならない。

さて、前二輪が終わると、減った分のブレーキフルードをタンクにつぎ足し、タイヤを組み込む。できれば、このときに安全なところでブレーキをテストし、エアを噛んでいないかどうか(ブレーキホース中に空気が残っていないかどうか)をチェックする。

次に後輪のブレーキホース交換である。後輪は各ブレーキに2本のブレーキホースがある。写真9は交換前のブレーキホース1である。赤矢印で示したのがブレーキホースである。青矢印で示したのは、エア抜きのためのバルブだ。


写真9 後輪のブレーキホース1(交換前)

写真10は同じブレーキホースを上から見たところだ。


写真10 上から見た後輪のブレーキホース1(交換前)

写真11はもう一方のブレーキホース2(交換前)である。少しわかりにくいが、赤矢印で示したのがブレーキホースであり、黄色の線に沿うように配置されている。


写真11 後輪のブレーキホース2(交換前)

写真12は、同じブレーキホースを下から見たところだ。


写真12 下から見た後輪のブレーキホース2(交換前)

後輪は、各輪につきこれら2本のブレーキホースを交換する。交換する手順は、基本的に前輪と同じである。

写真13はステンレスメッシュのブレーキホースに交換した後のブレーキホース1である。輝くステンレスホースが眩しい!


写真13 交換後のブレーキホース1

写真14は、交換後のブレーキホース2である。


写真14 交換後のブレーキホース2

前輪の場合と同様に、ブレーキクリーナーやウエスで付着したブレーキフルードを拭き取る。

さて、ブレーキホースの交換後は、前輪の場合と同様にエア抜きである。エア抜きバルブにレンチを掛けているところを写真15に示す。


写真15 後輪ブレーキのエア抜き作業

後輪のエア抜き作業も前輪の場合と同様だ。なお、エア抜き作業の際には、エア抜きバルブのところからブレーキフルードが出てくるので、写真16のようにビニール袋等で覆っておくと良い。


写真16 ブレーキフルードが飛び散らないようにビニール袋で覆う

写真17は、ブレーキペダルを力一杯踏んでいるキャノンさんだ。しかし、いつ見てもこのステアリング・・・・。


写真17 ブレーキペダルを力一杯踏んでいるキャノンさん(とキャノン号のステアリング)

エア抜きが終わると、ブレーキフルードの容量を確認し、不足しているようなら継ぎ足す。写真18にブレーキフルードタンクを示す。その後、後輪のタイヤを組み付ける。


写真18 ブレーキフルードタンク

以上の作業が完了したら、安全な場所でブレーキテストを行い、徐々にハードブレーキテストをして、最後は40〜
60km/hくらいからハンドルを離してフルブレーキをし、ハンドルがとられたりしていなければOKである。

そして、最後にもう一度ジャッキアップし、交換後のブレーキホースから漏れがないことを確認する。これで作業は完了である。

何度も繰り返すが、ブレーキは言うまでもなく重要保安部品である。くれぐれもこの作業は一人では行わない事。そして安易な気持ちで取り組まず、面倒がらずにウマ掛け、タイヤ突っ込み、そして前後に分けて行う事がベストな作業だと思う(BJさん談)。


交換後のインプレッション

以下は、BJさんのインプレッションである。原文のまま掲載する。

装着後のインプレは・・とても効き始めが早くなり、一見ブレーキが良く効くような錯覚に陥りますが、要はフルブレーキ状態がとても早い状況で起こせられると言う事でして、パニックブレーキやついつい踏み込みを躊躇ってしまう人には丁度良いかも知れません。もちろんレーシーな走り屋さんにもうってつけダスが、別の見地から女性向き?かと感じてしまう自分ダスた。。(初期制動が早い事に慣れれば女性ドライバーにとって、あっ!と思った時などには即ABSが作動させられる程強いブレーキをかける事ができますので。)

BJさんのインプレッションのように、ステンレスメッシュブレーキホースへ交換すると、ブレーキペダルの踏力がダイレクトにブレーキシステムに伝わるような感じらしい。機会があれば装着してみたい装備だ。

なお、BJさんはステンレスメッシュブレーキホースをババリアンオートから輸入されたようだ。E34用のブレーキホースはE36用と共通なので、購入先や価格の選択肢が比較的広いだろう。



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