2025年10月4日(土)

E63 運転席ドアロックの修理 − 磯辺温泉さんより

今回は久しぶりにご登場の磯辺温泉さんより、E63の運転席側ドアロックの修理レポートをいただいたので紹介しよう。15年ぶりぐらい?


こんにちは。久々の投稿です。DD様と同じE63乗りの磯辺温泉です。この度、ドアが開かなくなるという不具合について、おしろくて使える道具(内視鏡)があったのでそれをレポートします。今回のケースですが、右フロントドアがまったく開かなくなるという不具合です。

■症状

ということで、どうやっても右フロントドアが開けられなくなりました。どうしよう、開かない状態では室内の内張りをぶっ壊すしかないのか。。。。。そして開けて本当に治るのか?という不安がよぎります。


画像1:ドアロックピン。これは正常に操作できる


画像2:室内側レバー。施錠されたドアロックピンは上がる。でもドアは開かない。


画像3:ドアハンドル。カチャカチャやっても無反応。開錠できず。

■ 原因追及(仮説)

ということで、ネットを調べまくったのですが、内外ともに開かないというのは希で、開錠できたという事例なし。困った!困った!

 

■対策1

ドアハンドルをガチャガチャ引っ張っても感触がなく、室内側レバーも空回り。ドアが開かないって一体これどうすんの・・・・ ディーラーに持込み、症状を伝える。もちろん検査費用は遠慮するとの前置きでw

<ディーラーのコメント>

ドアロックアクチュエーターユニットに起因するトラブルなんだろうけど、ドアが開かなきゃ交換すらできない。アクセスするには、

ということで、修理費用の膨らみを妄想しつつ、テンションはだだ下がりに。

 

■ 対策2

原因を再現するために、新品のドアロックアクチュエータを発注することに。どうせ経年で交換するんだろうから。届いたアクチュエーターで、動作の仕様をひとつひとつ確認することにしました。


画像4:室外側からみた新品のドアロックアクチュエーター


画像5:室内側からみた新品のドアロックアクチュエーター

原因を再現すべく、かなりの時間をかけて試行錯誤してわかったことですが、

  1. ドアロックピンを下げてロックする+ ラッチを施錠側にする。
  2. 「ドアハンドルのケーブルを開錠方向に引っ張った状態」を保ちつつ、ドアロックピンを開錠側にする。
  3. 「ドアハンドルのケーブルを開錠方向に引っ張った状態」で、室内側レバーのケーブル部を引く

正常なドアロッアクチュエータで、この動作をすると「ラッチは開錠しない」ということが分かりました。この「ドアハンドルのケーブルを開錠方向に引っ張った状態」というのは、通常あり得ない状況です。そしてこの引っ張りを開放すると正常にラッチが開錠します。ここからは推測ですが、ドアロッアクチュエータのドアハンドルケーブルが何等かの原因で、常時引っ張られた状態であるのではないかと考えました。

これを検証すべく、Amazonから内視鏡3,442円を購入しケーブルの状態を調べることに


画像6:Amazonで購入した内視鏡
 
これはスマホに接続する、直径7o ? 長さ5mのケーブルの先端部に、カメラとLED照明があり、写真、動画を撮ることができます。

 

■内視鏡による検証(その1:室内側レバーを外しその隙間から)

ドアハンドルのケーブル周りの点検


画像7:内視鏡を入れてるところ


動画8:室内側レバーからのケーブル連結部。(内視鏡から画像4の赤丸部分)

なにか切れているような症状は特になし。これは正常。

 

■内視鏡による検証(その2:窓ガラスの隙間から挿入)


画像9:窓枠から内視鏡を入れてる画像。

もっと後側から入れたいがウインドウが邪魔して入らない。


動画10:ドアハンドル裏のケーブル部

ドアハンドルのケーブル部周りの点検:ケーブルが切れているような形跡はなし ※すぐ横がウインドウなので反射して見えています。


画像11:ドアハンドルケーブルから繋がるドアロックアクチュエータ部 (内視鏡からみた画像5の赤丸部分)


画像12:これは正常なケーブルです。
 
おやっ!画像11と比較すると、黒のケーブル部(赤丸)が抜けとるではないかい。そして、前述どおり「ドアハンドルのケーブルを引っ張った状態」=ゴムブーツが潰れている!のがわかりました。

なら、破壊してしまえこのケーブル! ドアロックアクチュエータから外せば、引っ張りを開放できる!!

 

■ 手術開始

不具合箇所が見えたら、治したくなるのは当たり前。 「このケーブル端部に引っ掛けてドアロックアクチュエーターから外せばきっと動くよな」ということで、このような治具を作成することに。


画像13:治具を作成。自転車のワイヤーワイヤーの先に、丸リングを結線


画像14:窓枠(手の位置)から治具を入れ手術開始。
 
スマホの画面を参照しながら、アクチュエーターの上部にある手の位置からするするっと治具を落としていく。ウィンドウが邪魔で思ったように入っていかない。ようやくドアロックアクチュエータ部を撮影できた。


動画15:ケーブルを外している内視鏡動画

なんだかゲームセンター気分。見ているだけでハラハラドキドキ。こんな感じで手探りで操作。かれこれ1時間は経過している、その時だ! ワイヤー治具がケーブル端部にひっかかる。その瞬間、喜びと喚声! まさに、ブラックジャックが、カツオ、いやマグロに Bite されたような気分。

そのあと、エィって心の中で声をだし、一気に引っ張り出す。バキッという音とともに「いったな」と手応えを感じる。そして「少しおちつけ!」と自分に言い聞かせ、室内側レバーをゆっくり操作する。カチャという久々に聞く快音(開音)と同時にドアが開く。

「やったー!成功!!」

ということで、無事にドアを開錠することができました。これは前述した、内張り交換、ドア交換からの不安に解放された瞬間でした。まさに…天から1万円札がヒラヒラ落ちてくるような、最近経験したことがない最高の気分でした。

このあとは、購入したドアロックアクチュエーター交換、ケーブル交換と続くわけですが、ここでは割愛します。

今回はじめて、内視鏡というものを購入して試してみたのですが、車のメンテナンスで、有効な道具だということを共有したくてレポートにしました。皆様どうぞ参考にしてください。

 

追伸:

今回のケースは、不具合が発生している希な状態を利用して開錠できたものです。正常な車の状態から、このレポートを参考に開錠することはできませんので、ご安心下さい。


ドアが閉まった状態で、ドアロックが解錠できなくなった場合には、基本的に内張りに穴を空けてドアロックを解錠するしか仕方がないのだが、うまく内視鏡で見ながら解錠できたようだ。

末尾ではあるが、有用なレポートをいただいた 磯辺温泉さんに感謝する。


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ご質問はddkunnejp【@】gmail.comまで。

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