2007年1月16日(火)

E39 ラムダセンサ(O2センサ)の交換 − ミッチョさんより

今回はミッチョさんよりE39のラムダセンサ(O2センサ)交換レポートをいただいたので紹介しよう。8万キロ以上乗っている方は参考になるだろう。


【ラムダセンサの役割】

BMWでは「ラムダセンサ」と呼ぶこの部品は、日本では「O2センサ」の呼び方が一般的で、USでは「OXYGEN SENSOR」と呼ばれている。エグゾーストパイプの触媒前に取り付けられているラムダセンサは、空燃費を最適化するための情報をECUに送る役目をしている。

という情報を得たECUは、最適な燃焼となるようにインジェクターの噴射時間をコントロールする。

ラムダセンサが不良となると、ECUは燃焼の状態をモニターできなくなり、燃料噴射量は基本量に固定されるので次のような症状が出る。

ラムダセンサはおよそ8万kmで寿命を迎え、修理や清掃による性能回復は望めないため交換が必要である。しかし、交換のサイクルが長いことと、1個約3万円の価格がネックとなって交換されない場合が多い部品だ。

私の愛車のエンジンは快調である。しかし、9万キロを越え、ラムダセンサの交換時期を過ぎているので交換することにした。

【高価なセンサ】

ラムダセンサはE34の6気筒モデルの場合、エグゾーストが一箇所に集まる触媒直前に1個(図1、V8モデルには2個(図2)使用されている。


図1 E34 525の ラムダセンサ位置


図2 E34 540のラムダセンサ位置

この場所のセンサ交換には、マフラーを降ろす必要があるので少々厄介な作業である。

E39の場合を調べてみると、前期型M52エンジンの525には、エグゾーストマニホールド3気筒につき1個の合計2個使用されている(図3の位置)。


図3 E39(M52)の ラムダコントロールセンサの位置

528のM52B28とM54エンジンの場合は、触媒前にラムダコントロールセンサ2個と触媒後にラムダモニターセンサ2個が使用されている(図4)。


図4 E39 528 モニターセンサの位置

排ガスのクリーン化と燃費の向上のために、よりきめ細かく制御されているのだろう。

私の車両はM52エンジンの525で2個使用されているから、部品代だけで6万円以上の出費となり、少し燃費が悪いだけで不調が出ていなければ交換はしないのが普通だろう。

 

【ラムダセンサの交換 その1】(失敗の巻)

エンジン不調が出ていないのに6万円の出費は痛いので、ネットオークションで安い部品を探してみた。

E34用のBOSCH製センサを取り寄せ、コネクターを付け替えて使用しようと試みた。写真1はコネクタの違いを比較したものだ。


写真1 コネクタの違い

BOSCH製センサを取り付けようとしたところ、E39のセンサと随分大きさが違うことに気づいた。

写真2の手前がE34用BOSCH製センサ、写真3がE39純正センサで一回り小さくて細い。


写真2 E34用BOSCH製センサ


写真3 E39純正ラムダセンサ

ネジ径は同じだが、センサのサイズが大きく、エグゾーストパイプとシリンダーブロックの間のスペースに入らない。これは失敗だ。幸い、購入したセンサは未使用なため、E34オーナーに引き取っていただけた。

 

【ラムダセンサの交換 その2】(再度失敗の巻)

(1)センサの調達

次に純正センサと形状がよく似たヨーロッパNGK製のユニバーサルタイプを入手した(写真4)。


写真4 ユニバーサルセンサ

ユニバーサルタイプとは、配線をつなぎぎ変えて元のコネクターを再利用するものだ。

(2)純正センサの取り外し

E39 525のセンサは、前3気筒側はエンジンルームからアクセス可能で、後ろ3気筒側は車両下からアクセスできる。センサは22mmのレンチが必要だが、熱で固着している場合が多いので、ゆるめるのが大変だとよく聞く。写真5のようなO2センサ用レンチもネットオークションで入手しておいた(800円)が、固着はなく簡単にゆるめることができた。


写真5 センサ用レンチ

M52エンジンのコネクターは写真6のようにエンジンのヘッドカバー横の位置にある。


写真6 コネクタ位置

(3)配線のつなぎかえ

写真7がNGK製と純正の比較である。


写真7 ユニバーサルタイプのセンサー(上)と純正センサー(下)の比較

配線色が違うのが気になるが、配線図(図5)をもとにつなぎ替えてみた。


図5 ラムダセンサー配線図

リードは4本でうち2本はヒータ線、残りの2本が信号アースとセンサ線だ。実は、この配線色の違いの意味をよく知っていれば、失敗をしなくて済んだことは、後になって分かることであった。

写真8に配線をつなぎかえた様子を示す。


写真8 配線をつなぎかえたセンサ

圧着端子で接続してあるのだが、念のため半田付けしてみた。しかし、この耐熱線?には普通の半田がのらない。どんな半田を使えばよいのだろうか?

(4)取り付けと走行テスト

取り外しの逆の手順で取り付けをし、エンジンをかけてみる。普通にエンジンはかかるのだが、アイドリングがわずかに下がった。また、交換前よりも、ほんの少し振動が大きくなっているようだ。

テスト走行をしてみると、アクセルを踏んでも加速が鈍い。これはどう考えてもおかしい。しかし、ECUの学習機能のせいかもしれないと考え、燃料が空になるまでしばらく様子を見ることにした。

少々の長距離も走った後、燃料を入れた際に燃費を計算してみると、何と燃費が悪くなっているではないか。ドライブフィールから考えても、おかしいことは明白である。この交換も失敗だった。

 

【失敗の原因追求】

ラムダセンサについていろいろと調べてみると、どうやらセンサが適合しないということが分かってきた。以下の情報は主に下記のURLで仕入れた情報である(2007年1月12日現在)

http://www.lambdasensor.com/

http://home.att.net/~ngksparkplugs/wsb/html/view.cgi-home.html-.html

http://www.automedicsupply.com/index.php?ref=Overture&OVRAW=oxygen%20sensor&OVKEY=oxygen%20sensor&OVMTC=standard

 

<ラムダセンサの種類>

ラムダセンサには、次の2種類のタイプが存在し、互換性はない。

  1. ジルコニアセンサ
    センサにはジルコニア素子の内外に白金がコーティングされていて、この内外面の酸素濃度差によって電力が発生する仕組みを利用している。この電力は理論空燃比相当の酸素濃度付近を境に0.1V〜約1Vの間で電圧が大きく変化する。きわめて多くの車両で、このジルコニアセンサが使われている。

  2. チタニアセンサ
    ジルコニアセンサのジルコニアの代わりに高純度のチタニアを使用している。ジルコニアセンサは0.1〜1Vの起電力を生じるが、チタニアセンサは内部抵抗が変化するのが大きな違いである。普通、1Vから5Vの電圧をかけ、内部抵抗の変化で起きる電圧変化をECUか検出する。このセンサを使用している車両は少ない。

私の97年式E39 525(本国ではM52の525は523と呼ばれ、M54の525と区別されている)には、あまり一般的ではないチタニアセンサが使われていたのだ。チタニアセンサはワイヤーに赤色が使われているのが特徴だ。

装着したセンサはジルコニアセンサだったため、エンジンが不調になるのは当たり前である。同じE39 523でもジルコニアセンサが使われている場合もあるようだ。また、M54エンジンでは、再びジルコニアセンサに戻されているようで、とても分かりにくい。

このセンサの違いを、ディーラーのメカニックに相談したこともあるが、知らなかったようだ。

 

【ラムダセンサの交換 その3】

(1)センサの調達

さて、チタニアセンサを調達しなくてはならないのだが、ネットオークションなどに出品されているのは、ジルコニアセンサばかりだ。海外サイトの通販を利用すれば、純正品の半額程度で入手できそうだが、それでも3万円近い出費となる。

そこで、4万km走行のE36 328の解体部品を購入することにした。同じM52エンジンでチタニアセンサである。コネクタの形状が少し違うのは付け替えることにした。

中古で十分と判断したのは、今はスクーターで通勤しているので、愛車には週末しか乗らず、年間6,000kmほどしか走らないためだ。今のペースなら、中古センサでも寿命を迎えるまでにあと7年もかかる計算で、走行距離は13万kmにもなる。

(2)コネクタの交換

E36 328のラムダセンサは、
     P/N:1178 1427 762 SIEMENS L=990mm(ただし最終型はE39と同じ部品番号) 、
E39 523は、
     P/N:1178 1427 884 SIEMENS L=990mm 
でコネクタの切り欠き形状以外は、センサ本体も配線の長さも同じだ。コネクタから端子を抜けば、簡単に移植できる(写真9、10)。


写真9 E39のコネクタ


写真10 E36のコネクタ

しかし、この端子が簡単に抜ける構造ではない。写真11の右の端子のような、内部で2方向に広がっている爪を引っ込めないと抜けてこない構造だ。


写真11 圧着端子

そこで、手持ちの端子を写真11の左のように加工して広げ、写真12のように端子を包むように差し込むことで抜くことにした。


写真12 コネクタから端子を抜いているところ

写真13が防水コネクタから端子を抜いたところである。


写真13 コネクタから抜いた端子

端子さえ抜けてしまえば、E39のコネクタに差し込むだけで交換完了である。

(3)取り付けと走行テスト

何度か脱着をしているので、ジャッキアップすれば交換は1時間ほどでできた。エンジンをかけてみると、当たり前だがジルコニアセンサのときとは違い安定したアイドリングを示す。排気ガスの生ガスにおいも、少し薄くなったような気がする。

走行してみても、全く違和感なく加速するし、以前より吹けあがりが良くなったような気がする。センサがうまく機能しているようだ。

 

【まとめ】

中古ではあるが、寿命を迎えたラムダセンサを交換してから5回ほど給油した。

燃費の変化だが、以前は市街地で6km/lの前半だったものが、6km/lの後半になった。高速走行では、以前は10km/l止まりで一度も11km/lを超えたことはなかったが、2回の高速走行(合わせて1,000kmほど)11.9と11.6と、いずれも11km/lの後半を記録した。

劇的な変化ではないが、燃費の向上は明らかである。また、レスポンスも向上したので非常に気持ちがよい。

E39の場合、純正部品を入手すれば、ラムダセンサの交換は比較的簡単な作業である。しかし、6万円の部品代となると少々考え物だ。USから輸入をする機会があれば、1個100ドル前後で入手できるので、交換時期を過ぎている方にはお勧めのメンテナンスである。

随分と遠回りをしてしまったが、安価に交換ができたし勉強になった。何より、エンジンフィールが向上したのがとても快感である。


かなり試行錯誤で苦労されたようだが、E39乗りの方には有用なレポートだろう。

末尾ではあるが、いつもながら詳しくわかりやすいレポートをいただくミッチョさんに感謝する。



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