2005年3月27日(日)

オートエアコン温度調節の修理(1) トラブルシューティング編 − ミッチョさんより

今回から3回にわたって、ミッチョさんからいただいた「オートエアコン温度調節の修理」を紹介しよう。


オートエアコン温度調節の修理(1) トラブルシューティング編

M5購入時から気になっていたエアコン不具合を修理したので、その模様を報告する。今回の不具合とは、次のようなものである。

温度制御がうまくいかない原因はいくつかあり、次の順にチェックしていった。

【原因1 ヒーターバルブの不良】

ヒーターバルブは、エンジンルームから室内のヒーターコアに送る温水をコントロールしている。暖房時には冷却水の温水を室内に送り、冷房時には温水をストップする働きをしている。

温水の通路は運転席側・助手席側と独立していてバルブも2つ内蔵している。このバルブが固着、またはバルブを駆動するソレノイドが故障すると、「熱風しか出ない」または「冷風しか出ない」などの症状が出る。

テスト方法交換方法の詳細は、DDさんのページに記録があるので参照されたい。今回の場合は、このヒーターバルブに問題は無かった。

ヒーターバルブが原因で無いとすると、問題は室内側の温度調節機構にあることになる。

【原因2 エアコンユニットの温度調節フラップの動作不良】

E34の空調は非常に凝った仕組みとなっていて、吹き出し口の切り換えや温度調節などの制御に10個ものアクチュエーターが使用されている。図1はその仕組みの概略を分かりやすくしたものだ(図・解説はDOP-GUNさん提供)。


図1 エアコンの仕組み

<図1の解説>

ユニットへの空気取り入れはBのフラップにて外気と内気循環と切り替えられ吸気されていきます。その取り込まれたエアーは全て「エアコン・コア」を通り、そしてヒーターコアも通ります。が、ここで唯一Cのフラップが動く事によりダッシュ正面にだけに、「エアコン・コア」だけをパスしたエアーが吹き出されます。

 これが、温風を足元に出しながらCのフラップが開くことにより、顔には冷風を出すことが出来るシステムを作りだしています。

この内、CとDのフラップの動作は、ダッシュボード中央上のエアフレッシュグリルを外し、温度調節ダイヤルをいろいろに動かすことで確認できる。手前の2本のビスを外すだけで簡単に取り外すことができる。

写真1〜4が内部のフラップ動作確認の様子だ。


写真1 左風量調節フラップ「閉」


写真2 左風量調節・温度調節フラップともに「開」


写真3 右風量調節フラップ「開」・温度調節フラップ「閉」


写真4 右風量調節&温度調節フラップともに「開」

左側だけ、Dの「温度調節フラップ」が全く動いていないことが確認できた。このフラップが動かない原因もいくつか考えられるので、分解の手間がかからない順に確認していった。

1.エアコンコントロールパネルの不良

エアコンスイッチが集中しているユニットのことである。ここが故障すると、温度調節が不能となる。これも別のページに記録があるので参照されたい。

ユニットを交換してもフラップの動作に変化が無いことから、問題は他にあることが分かった。

2.エアコンコントロールユニットの不良

外気温、室内温度、水温、エアコンスイッチの状態などの情報が集まり、クーラー、ヒーター、温度、吹き出し口の選択などを制御する部分である。このユニットは、マイクロフィルターの更に前方、室内足元の一番奥に隠れている(写真5・6)。


写真5 エアコンコントロールユニットの位置


写真6 エアコンコントロールユニット

左右のカプラーを外し、クリップをつまんで引き抜くことで外すことができる(写真7・8)。


写真7 ACコントロールユニット裏側


写真8 ACコントロールユニット内部

これも、解体部品と交換してみたが、問題の解消とはならなかった。

3.温度調節フラップのアクチュエーターの不良

アクチュエーターをしっかり確認するためには、センターコンソールを外す必要がある。コンソールの分解手順は、次のレポートに詳しく述べる。

コンソールを外し、アクチュエーターが見える状態にしたのが写真9・10である。


写真9 エアコンユニット左側


写真10 エアコンユニット右側

私のM5は右ハンドルで右側のアクチュエーターが見づらいため、写真10は左ハンドル車の写真(画像提供:庭師さん)を使用している。図1と照らし合わせてみると構造が分かると思う。エアコンユニットはハンドル位置に関係なく同じである。

写真9の左側温度調節アクチュエーターをアップにしたのが、写真11である。


写真11 アクチュエーターの異常

アクチュエーターのアームが本来の可動範囲を超え、台座のプラスチックを破壊して行き過ぎていた。そのため、温度調節フラップのロッドが外れ、温度調節ができない状態であることが分かった。アクチュエーター自体は動作しているようだ。

写真12はアクチュエーターを外した状態の台座部分である。


写真12 アクチュエーターの台座破損

台座のみの交換はできないので、エアコンユニットの「ハウジングセンター」と呼ばれる部分を交換するか、破壊された部分の再生をすることで温度調節ができるようになるはずだ。

「ハウジングセンター」を交換するにはダッシュボードを外し、ヒーターコアやエバポレーターの脱着と大変な作業となるそうだ。とても私の手には負えそうもない。また、業者に依頼すると10万円を超える金額になることは必至である。他の修理も必要でない限り、そこまでやる意味は無いだろう。

アクチュエーターを取り去って、温度調節フラップを冷風側に固定するのが一番簡単な修理方法だ。そうすれば、エアフレッシュグリルからは冷風のみが出るようになり、困ることはない。しかし、せっかくの機能を殺してしまうのは悔しいので、台座部分の再生をすることに決めた。この模様は次のレポートで詳細に報告する。

ここまでたどり着くのに、土日だけの作業で3週間もかかってしまった。途中でマイクロフィルターの交換やコントロールパネルの修理などもしたこともあるが、最初にアクチュエーターを確認すれば良かったかな?

コンソールをバラした状態で3週間動かさなかったら、バッテリーも瀕死の状態となった。オプティマバッテリーに交換する理由付けまでできてしまった(笑)。

アクチュエーターの動作制御方法と台座の強度不足は、どう考えても構造的欠陥である。プラスチックの劣化と共に、遅かれ早かれ同様のトラブルが同じ構造の全車に出るはずだ。後期型は対策されているのだろうか?

しかし、空調の仕組みが分かって勉強になった・・・・けど疲れた!


上記のような手順で原因は判明したようだ。E34のエアコンは奥が深い・・・。

末尾ではあるが、有用なレポートを提供いただいたミッチョさん、エアコンの構造を解説いただいたDOP-GUNさん、画像を提供いただいた庭師さんに感謝する。

オートエアコン温度調節の修理(2) トラブル原因追求編 − ミッチョさんより」に続く・・・。



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