2007年12月31日(月)

ヘッドライトのバイキセノン化(バイク編) − ミッチョさんより

今回は、ミッチョさんよりいただいた、バイクのヘッドライトのバイキセノン化のレポートだ。これは、E39ヘッドライトのバイキセノン化への小手試しといったところか?


通常、ヘッドライトのロービームは、光源の下側から出る光をレンズや遮光板でカットし、対向車の幻惑を防いでいる。HIDライトの場合、ハイビームにはハロゲンライトを追加するのが普通で、BMWもE39まではこの方式である。

しかし、E46後期型以降からは、HIDライトにバイキセノンライトを採用するようになった。欧州車が使い出したバイキセノンも、国産車でも最近になって採用する車種が増えてきてた。

バイキセノンライトとは、ハイビーム時にロービーム内の遮光板を移動させることにで、ロービームからもハイビーム領域に光を照射する構造のライトのことである。ハイビーム使用時(パッシングは除く)には、ロービームはそれ以前から点灯していて安定した光源になっている。ハイビームをHID化するのも良いのだろうが、発光が安定するのに時間がかかることから、遮光板でカットされているロービームの光を、ハイビーム領域にも照射するのはとても理にかなっていると思う。

バイキセノンではないE39のキセノンヘッドライトをバイキセノン化できれば、ハイビームにHIDを入れなくてもかなり明るくなるだろうということが容易に想像できる。その改造は現在進行中だが、今回はE39のバイキセノン化のきっかけとなった、バイクのバイキセノン化をレポートする。

 

【はじめに】

今回、改造に使用したバイクは、台湾ヤマハが製造している「マジェスティ125」(通称「コマジェ」)というスクーターだ。このスクーターは、以前にE34 M5を購入したとき、通勤で渋滞路を走らせるのが忍びなくて購入したものだ。国産車にはない250cc車並の大きさとスタイリッシュなボディに惹かれた。このスクーターはインジェクション仕様で、通勤使用のみで夏場は42km/l、冬でも38km/lと燃費がすこぶる良い。

電装は自動車と同じ12Vで、ヘッドライトには普通のH4バルブを使用し、レンズで配光を整えている(写真1)。


写真1 純正ライト

HIDに慣れると非常に暗く感じてしまい、購入と同時にサンヨーテクニカ製H4のHi/Low切り替え式のHIDを組み込んだ。

H4のHIDはバルブ下の光を遮光板でカットしてあり、ハイビーム時にはバルブをモーターで少し移動させて上向きの光を作り出している(写真2・3)。

写真2 H4 HIDのロービーム 写真3 H4 HIDのハイビーム

ロー・ハイともに中央部に光が集中し、スポットライト的な配光になっていることが分かるだろう。また、ハイに切り替えると、ロービーム領域が暗くなり、ハイビーム使用時も思ったより遠くを照らすことができない。

また、バーナーは専用品となりかなり高価だ。サンテカ製バーナーが2年でお亡くなりになったのを機に、思い切って自動車用のバイキセノンプロジェクターライトを移植することにした。そうすれば、安価なD2Sバーナーなどが使用できるし、国産車純正ユニットを使用すれば信頼性も抜群だ。

 

【ライトユニットの選定】

まずライトハウジングの調達が必要だ。純正のライトはリフレクターで反射させた光をレンズカットによって整えている。プロジェクターライトを使用するには、クリアタイプのレンズカバーが必要となる。幸い、コマジェにはアフターパーツでクリアライトが存在する。KOSO社製マルチリフレクターライトを調達(8,500円、BMWに比べ何と安いことか)した(写真4)。


写真4 マルチリフレクターライト

次に内部に仕込むバイキセノンユニットの選定だが、バイクのライトは奥行きが限られているので、全長の長いものはハウジングを切らないと入らない。ハウジングを切ってしまうと、後の防水処理が面倒だ。ハウジングを切らなくてよいユニットを探した。

この時点でバイキセノンライトを採用しているのは、国産車ではおよそ次のとおりだった。

ベンツやBMWのユニット(HELLAやBOSCH製)もあるが、まずは現物がないと、ライトハウジングに収まるかどうかの判断ができない。オークションで日産ムラーノとスバルの純正ライトユニットを入手した。(写真5〜7)


写真5 バイキセノンユニット1


写真6 バイキセノンユニット2


写真7 バイキセノンユニット3

ムラーノ用は、レンズ径が70mm、スバル用は60mmで、当然レンズ径の大きいライトの方が全長も長い。また、ムラーノ用は遮光板を駆動するソレノイドが後方まで飛び出していて、ライトハウジングを切り取らないと入りそうもない。その点、スバル用は全長も短く、ソレノイドがライトボディに入り込んでいるので出っ張りが少なくコンパクトだ。これなら、ライトハウジングを切らなくても余裕で入れることができそうだ。ちなみに、ムラーノ用は遮光板をソレノイドで引っ張って前方に倒す方式で、スバル用は遮光板を下方に引き下げる方式だ。(写真8)


写真8 スバル用のソレノイド部分

プロジェクターレンズ径が60mmで全長が短く、コンパクトなスバル用のユニットを使用することにした。ステーも利用しやすそうだ。

バラストは何でも良かったのだが、手持ちの中から松下製(日産純正)のものを使用した。

 

【製作の実際】

1 ライトハウジングの分解

新品社外ライトをヒートガンで熱して分解する。これは自動車用ライトと同じ要領だが、軽くて小さいので比較的簡単だ。補記類もないので、熱湯で「煮る」という方法もあるようだ。

レンズカバーを外すと、内部にはリフレクターが入っているだけで、これを取り除くと、上下の光軸調整用のネジがある。車と違って左右調整機構はない。(写真9)


写真9 ハウジングの分解

2 プロジェクターライトの固定

元々ある光軸調整ネジを使えるように位置決めをし、それに合うようにアルミ板でステーを作る。今回の作業全体で、一番手間がかかったのがこの作業だ。上2点の支持には2mm、下の光軸調整ネジにつながる部分は3mmのアルミ板を使用した。(写真10〜12)


写真10 取り付けステー上


写真11 取り付けステー下


写真12 ユニット固定の様子

レンズカバーを接着してしまうと修正ができないので、この状態で一度車体に取り付け、光軸が合うか確認してみる。ユニットが適当な角度で固定できているのが確認できたので、固定方法はOKだ。(写真13)


写真13 テストの様子

走行中にネジが緩んでは困るので、「ロックタイト」を使って、ネジ類の緩み止めを施す。

3 目隠し板の製作

このままレンズカバーをすると、内部のステー類が丸見えになってしまうので、目隠し板を製作する。

画用紙で型紙を取り、100均で購入したファイルの表紙(ポリプロピレン製)でインナートリムを作る。このままでもいいのだが、ちょっとペラペラで安っぽかったので、アルミのパンチングメタルを張り合わせた。これを、レンズユニットのネジと共締めで取り付ける(写真14)。


写真14 インナートリム1

ここで、デイライトやイカリングなどを取り付けると見た目がいいのだが、実用本位の通勤車はこれで十分。

 

4 ライトレンズの接着

内部にほこりが入らないよう注意しながら、シリコンシーラントを接合部に充填しライトレンズを接着する。一晩おけばライト本体は完成だ。(写真15)


写真15 レンズカバー接着後

うーん、ガンダムの「ザク」みたいだ!

5 防水処理

バルブ取り付け部分に、元の防水カバーは使えない。100均ショップを数件回ったが、ちょうど良いサイズのケースはなかかな見つからない。ようやく写真のようなネジ込み式のケースを見つけた(写真16)。ボルトナットや釘が入って105円である。


写真16 連結ケース

Low/High切り替え用リードを延長し、とバラストのケーブルを通してから、シリコンシーラントとタッピングビスで固定する。(写真17、18)


写真17 防水処理1


写真18 防水処理2

6 リレー回路の製作

H4コネクターは、ハイビーム時にロービーム側の電源が切れてしまうので、ハイビーム時にもバラストに電源供給がされるようリレー回路を作らなくてはならない。また、ハイビームの切り替え用信号も取り出す必要がある。今回は、お亡くなりになったサンヨーテクニカ製キットのHi/Loコントローラーを改造して使用した。

 

7 車体への装着

バラストの固定さえすれば、ライトを元の位置に装着して作業は完了である。正常に点灯し、Hi/Lo切り替えも問題なく機能している。これは期待ができそうだ。(写真19、20)


写真19 バラストの固定位置


写真20 装着後の外観

最後に光軸調整をして作業完了である。

純正ライトのときは配光にムラがあり、左右への広がりにも不満があった。H4のHIDを取り付けたときもそれは変わらず、むしろ明るくなった分、余計に配光のムラが気になっていた。

しかし、プロジェクターライトは均一な配光と左右の広がりで、十分満足のいくものとなった。(写真21、22)

写真21 ロービーム 写真22 ハイビーム

その後、夜間走行もしてみたが、見易さには雲泥の差がある。苦労して製作した甲斐があった。

 

【おわりに】

それまでバイキセノンライトはあまり一般的とはいえず、私はその構造も良く知らなかった。

使用してみると、やはり効果は絶大である。これが次のE39への移植の動機となるのであった・・・。「E39 後期型ヘッドライトのバイキセノン化」へつづく・・・。


ミッチョさんと言えば、「E39 DIY マイスター」として有名だ。でもバイキセノン化のために、ここまでやると「ただのオタクか?」と疑いたくなる(笑)。

末尾ではあるが、今回、非常に面白いレポートをいただいたミッチョさんに感謝する。さて、次回は・・・。



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