2002年10月18日(金)

エアコンコンプレッサーベルト交換 − BJさん&キャノンさんより

前回BJさん&キャノンさんより、E34の内装レザーの浮きを補修する方法を伝授していただいた。今回もBJさん&キャノンさんよりエアコンのコンプレッサーベルトの交換方法を教えていただいたので紹介する。なお、今回も写真や解説を提供していただいた。以下の説明は、BJ&キャノン号 92年式 525i M50エンジン搭載車のものであり、説明文のほとんどはBJさんから提供いただいた情報によることを明記しておく。

エアコンのコンプレッサーベルトは、文字通りエアコンのコンプレッサーを駆動するためのベルトであり、エンジン前部に装着されている。このベルトに亀裂が入ると、切れる恐れがあるので交換しなければならない。


写真1 コンプレッサー側から見たベルト(交換前)

BJ&キャノン号は、写真1のようにベルトに亀裂が入っていた。これはコンプレッサー側から見たところ。


写真2 オルタネータ側のベルト

一方、写真2はオルタネータ側のベルトである。こちらには亀裂が入っていない。ベルトの張り具合も問題なさそうである。

エンジンの前部には、エアコンのコンプレッサー側のベルトとオルタネーター側のベルトの計2本のベルトがある。通常は、コンプレッサー側のベルトとオルタネーター側のベルトは同時に交換するものであるが、今回は劣化して亀裂が入っているコンプレッサー側のベルトのみの交換作業である。


写真3 ファン(プロペラ)の外し方

まずは、写真3(1)のファンシュラウド(プロペラの周りのカバー)を外し、次にファン(プロペラ)のロックナット(2)を外す。


図1 ファン(プロペラ)の外し方

図1の赤印で示したところにあるのがロックナットであり(図では見えないが33mmの大きなナット)、これを外すとファンとファンカップリングが一体となって外れ、ベルトが簡単に交換できる。ロックナットを外すには専用の工具が必要だが、超薄型のモンキーレンチをパイプで延長してガキッと外すこともできる。なお、このときに、青色の矢印で示したネジを4本外すとファンカップリングも外すことができる。ファンカップリングは、とても汚れていることがあるので、このときに一緒に外して掃除しておくと良い。

ただ、実際にはエアコン側のベルト交換だけだとファンの取り外しは必要ない。オルタネーター側のベルトの交換時にはファンを取り外さなければならない。


写真4 交換前のベルト

ファンを外すと簡単にベルトを交換することができる。写真4が交換前のベルトである。


写真5 交換前のベルト(拡大)

写真5は拡大写真である。見事(?)にヒビが入っている。


写真6 新品のベルト

写真6は新品のベルト。これに交換するわけである。コンプレッサー側のベルトはオルタネータ側のベルトに比べて短いものを使用する。

ベルトの交換時には、その張り具合もチェックしておかなくてはならない。


図2 ベルトとベルトテンショナー

図2に示すように、ベルト(青色)は、ベルトテンショナー(赤色)によりその張力が保たれている。しかし、このベルトテンショナーが劣化すると適切な張力が保てなくなるのである。その場合は、このベルトテンショナーも同時に交換すればよい。

あまり劣化したテンショナーをそのまま使用していると、その他のガイドプーリーなどにガタも発生して十分なプレッシャーがかからず、オルタネーター側のベルトの場合、発電や冷却などもできなくなる。さらに、ウォーターポンプも破損しやすくなり、オーバーヒートを招くので、できれば何処かにガタが出てきた時はその辺まで、早期早期に手を打つことが大切である。


写真7 ベルトテンショナー

実際のベルトテンショナーを写真7に示す。どうやら中のオイルが少し漏れているようだ。


写真8 車両から外したベルトテンショナー

写真8に車両から外したベルトテンショナーを示す。このテンショナーは油圧式で、中はオイルと大きなスプリングで構成されており、ちょうどショックアブソーバーの小型版のようなものである。中身は油圧ピストンシリンダーが入っており、それをサポートするガイドスプリングとの構成になっている。


写真9 ベルトテンショナーのパッキン

写真9でもわかるように、確かにオイルが漏れていた形跡がある。

本来なら新品に交換すべきところであるが、地球環境に優しいBJさんはこれをオーバーホールして再利用したそうだ。

まず、中のオイルをすべて抜き、内部を綺麗に清掃する。そして脱脂剤で完全に洗浄する。なお、このときゴムの部分に脱脂剤をつけて劣化させないよう注意する。

そして、綺麗なATFを少しずつ入れて固さを調整する。再度組み直してから、オイルが漏れるのを防止するためタイラップでカッチリと留める。


写真10 ベルトテンショナーを組み直したところ

写真10に組み直したベルトテンショナーを示す。


写真11 タイラップでオイル漏れを防止

写真11にタイラップでカッチリと留めたところを示す。

前述のように、ベルトテンショナーは高価な部品ではないので、本来交換した方がよい。BJさんは応急処置としてオーバーホール方法を試したらしい(実際には、この方法でもしばらくもつらしい)。


補足説明

M50エンジンには、前期型、中期型、後期型があり、それぞれで少しずつ異なっている。

エアコンのコンプレッサー側のベルトはE34 M50エンジン搭載車共通(図3)であるが、オルタネーター側のベルトやテンショナーの構成は、3タイプある(図4〜6)。


図3 エアコン・コンプレッサー側のベルト


図4 オルタネーター側のテンショナー(タイプ1)


図5 オルタネーター側のテンショナー(タイプ2)


図6 オルタネーター側のテンショナー(タイプ3)

タイプ1,タイプ2には機械式のテンショナーが付いている。ベルトの取り回しは違うが、テンショナーは同じものが使われている。一方、タイプ3は油圧式になっている。自分の車はどのタイプなのかを確認して欲しい。

参考までに、ベルトテンショナーやベルトのパーツナンバーと価格を下記に示す。

表1 ベルト、テンショナーのパーツナンバーと価格
部品 パーツナンバー ディーラー価格 ドイツ価格
コンプレッサー側 ベルトテンショナー(共通) 1128 1 717 210 12,100円 51.59ユーロ
オルタネーター側 機械式ベルトテンショナー(前期、中期) 1128 1 427 252
(旧P/N 1128 1 748 832)
9.850円 42.68ユーロ
オルタネーター側 油圧式ベルトテンショナー(後期) 1128 1 717 188 13,300円 58.30ユーロ
コンプレッサー側ベルト 1128 1 703 943(92/1まで, 5K×890)
1128 1 437 873(92/1から, 5PK×906)
2,900円
2,900円
15.01ユーロ
16.17ユーロ
オルタネーター側ベルト 1128 1 735 190(94/4まで, 6K×1560)
1128 1 703 561(94/4から, 6K×1555)
5,100円
5,100円
28.87ユーロ
?ユーロ

(価格は2002年8月現在。パーツナンバーは間違えている場合があるかもしれないので、各自確認のこと)

今回も、BJさん&キャノンさんに貴重な情報を提供していただいた。BJさんには公開前にこのページの間違いを指摘していただき、さらに追加情報までいただいた。DDの説明が悪いためわかりにくい部分もあると思うが、ご容赦いただきたい。なお、末尾ではあるがBJさん&キャノンさんに深甚なる感謝の意を表する。



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